研究実績の概要 |
ペプチドデホルミラーゼ(PDF)により基質認識され,脱ホルミル化によってメチオニンアミノペプチダーゼ(MetAP)の阻害剤を放出することによるバクテリア選択的なタンパク合成阻害機構を構築する目的で,基質類似型のMetAP阻害剤の化学修飾を行ってきた。前年度までに達成できなかった酵素アッセイの確立を引き続き行い,ポジティブコントロールの再設定とアッセイ条件の確立後,既知阻害剤MCB2813の再評価を行った。研究当初のホモロジー検索により大腸菌と黄色ブドウ球菌由来のMetAPの活性中心と保存性が高く,MetAP1阻害に対する種依存性は低いと見積もっていたが,EcMetAP1には阻害作用をもたず,SaMetAP1に選択的な阻害剤であったことが明らかになった。しかしながら,母体のMCB2813の誘導体を合成し,これらの阻害活性を評価すると,弱いながらも阻害活性が観測され,MCB2813の誘導体化によってMetAP阻害能を十分改善可能であることがわかった。しかしながら前年度の実験でPDF認識に1,2,4-トリアゾールが不利に働いていることが示されたことから,当初想定の作用機序には1,2,4-トリアゾール系は向いていない。そこでメチオニンを含みアミドミミックとして1,2,4-トリアゾールの代わりにオキサジアゾール誘導体を別途合成し,この化合物はEcMetAP1阻害活性が有意に認められた。フランスの研究グリープにより別途報告されたPDF阻害剤の構造から,このオキサジアゾール誘導体はペプチドデホルミラーゼ(PDF)により基質認識されると推定でき,当初想定していた作用機序に適合したアミドミミックの構造要件を見いだすことができた。
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