研究課題
本申請者は細胞核たんぱく質RBM10/S1-1を発見し、これが選択的スプライシングの制御因子として遺伝子群の発現過程に重要な役割を果たす事を明らかにした。一方、近年、疾病の変異遺伝子研究からRBM10の異常は胎生期の色々な形成異常や成人での様々なガンなど多様な疾病に関わることが示唆されている。この多様な表現形へのRBM10の一元的な影響の理解を目指し、RBM10制御下の遺伝子を同定し、RBM10が関わる細胞活動と分子・細胞病態を明らかにする事を計画した。H27年度はRBM10が制御する遺伝子群の同定であった。RBM10を欠失した細胞と正常または過剰発現した細胞の全転写体をRNA-Seqで網羅的に同定し、このデータからRBM10制御下の遺伝子群の同定・解析を試みた。しかし十分に明確な結果は得られなかった。しかしながら、RBM10の過剰発現が細胞分裂時の中心体形成を障害し、細胞周期をG2/M期に停止させる一方、RBM10の欠失では中心体が異常に増幅する事をH28年度に見出した。現在この分子機序を述べた論文作成が終わろうとしている。上の結果はRBM10の量的不均衡が細胞に有害である事を示唆するが、実際、RBM10は細胞内活動度を自己調節する事が判った。即ち細胞の転写低下時にRBM10は細胞核内のS1-1 nuclear body (NB)と呼ぶ構造体に自己隔離し、転写上昇時にはスプライシング制御に与るべくNBから核質に移行する。この際、転写低下を感知しNBに局在化させるのはRBM10分子内のC2H2 ZnFであり、加えてこのC2H2 ZnFはRBM10の選択的スプライシング機能・活性の発現に必須な領域であった。本成績を論文とすべく研究期間をH30年度まで延長し追加実験を行った。この注目すべきRBM10の自己制御機構の論文をbioRkivに掲載し、現在投稿中である。
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bioRkiv
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10.1101/516831