研究実績の概要 |
本研究課題では、糖タンパク質に分岐型コア2糖鎖構造を形成する糖転移酵素C2GnTの発現量の増加がいくつかの癌において悪性度と相関する知見を利用した新規な癌悪性度診断法の確立を目指して、(1)生体内における安定性に優れた擬似糖 であるカルバ糖を非還元末端に有するコア2糖鎖を抗原とした抗コア2糖鎖モノクローナル抗体の作成、(2)その抗体により患者尿 検体中のコア2糖鎖を定量する手法の確立、以上2点を検討課題として挙げている。 課題(1)に関連して、平成29年度は分岐型コア2糖鎖(三糖)の部分構造に相当する2種類のカルバ二糖の合成に必要となるGalNAcおよびGulNAc供与体の合成を検討した。その結果、11工程で6位にトリフレート基を有するGalNAc供与体の合成を達成した。また、GulNAc供与体の合成は3位にトリフレート基を導入したGalNAc誘導体に対する反転反応を試みた。しかしながら、2位のNHTroc基の隣接基関与によりアジリジンタイプの生成物が優先される結果となった。 一方、カルバ-β-D-ガラクトース受容体の合成の進捗を以下に示す。カルバ-β-D-グルコースを原料に4,6-ベンジリデン化、2,3-イソプ ロピリデン化後に、アノメリック位へNAP基を導入した。次いで、得られた生成物のイソプロピリデン基を除去し、2,3-ベンジル化、選択的なベンジリデンアセタール基の還元開裂反応を経て3位に遊離のヒドロキシ基を有するカルバ-β-D-グルコースに変換した。その後、3位のトシル化、続く反転反応、最後に保護基の掛け替えを行うことで目的物の合成を達成した(11工程)。また、2-アジド-カルバ-β-D-Glc受容体の合成は、6-アセチル-カルバ-β-D-グルコースを原料に、反転反応を鍵反応として検討し、4工程にて2位にアジド基を導入することに成功した。
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