研究実績の概要 |
DNAのメチル化は細胞の発生や分化、細胞の癌化や様々な疾患に、また、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。 脱メチル化機構において、ヒドロキシメチルシトシンは鍵となる重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。上記を鑑み、本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出およびヒドロキシメチルシトシンを経由する脱メチル化挙動の解明を目指して、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質を作製し、これを用いてヒドロキシメチル化DNAの検出を行う。 H27年度は、ヒドロキシメチル化DNAを作製するTETタンパク質に着目して、ヒドロキシメチルシトシンを認識する蛋白質の設計を行った。ヒドロキシメチルシトシンのヒドロキシメチル基はDNAのメジャーグルーブに位置している。いくつかのDNA-TET複合体の構造が報告されており(Xu et al., Cell, 2013, 155, 1545-1555.)、これらの知見を基にヒドロキシメチル化CpG配列の認識に必要な相互作用、および各相互作用間の効果的なネットワークを分子モデリング計算を用いて検討した。これまでの検討および種々の芳香族性アミノ酸残基や疎水性アミノ酸残基に関する検討の結果、側鎖アミノ酸残基としてチロシンが有効であることが示唆された。
|