DNAのメチル化は細胞の発生や分化、細胞の癌化や様々な疾患に、また、DNAの脱メチル化は細胞の分化状態のリセットに関与していることが知られている。DNAメチル化はその機構が詳細に解明されている一方、脱メチル化にはいくつかの機構が提唱されてはいるが完全には解明されていない。 脱メチル化機構において、ヒドロキシメチルシトシンは鍵となる重要な中間体として注目されているが、その存在量は細胞によって異なり、かつ絶対量がメチルシトシンと比較して少ないため、その検出は難易度が高い。上記を鑑み、本研究はヒドロキシメチルシトシンの検出およびヒドロキシメチルシトシンを経由する脱メチル化挙動の解明を目指して、ヒドロキシメチルシトシンを認識するタンパク質を作製し、これを用いてヒドロキシメチル化DNAの検出を行うことを目指す。 前年度は分子設計の結果から作製したペプチドおよびタンパク質とヒドロキシメチルシトシンとの相互作用を検討し、疎水性アミノ酸残基側鎖のサイズと形状がヒドロキシメチルシトシンとの相互作用に影響を与えていることを見出した。 H29年度は、前年度の結果をフィードバックして、人工蛋白質・ペプチドの分子設計を再検討し、人工蛋白質、ペプチドの機能向上を図った。作製および取り扱いが容易なペプチドを用いてDNAとの相互作用を検討した結果、本研究のペプチドは、メチル化、ヒドロキシメチル化、非メチル化DNAを識別可能なことが明らかとなった。また、標的DNAとの化学反応による検出・観測を目指して、当該ペプチドをはじめとするプローブ分子とDNAとの化学反応についても検討を行っている。
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