研究課題/領域番号 |
15K05576
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
浜田 博喜 岡山理科大学, 理学部, 教授 (10164914)
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研究分担者 |
下田 恵 大分大学, 医学部, 准教授 (40284153)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ヒスタミン遊離抑制 |
研究実績の概要 |
ラットの肥満細胞に、compound48/80を作用させると、ヒスタミンの遊離が誘導されるが、このラット肥満細胞からのヒスタミンの遊離を抑制させる、抗ヒスタミン作用を持つ物質の合成を目指し、本年度は、我々の研究室において、すでに有用物質の合成に有効であることが確立されている、植物培養細胞等の培養細胞へ、外来の基質として投与した物質を有用な物質へ変換する、植物培養細胞を生体触媒として使用するバイオトランスフォーメーションにより、抗ヒスタミン作用を有する有用な化合物の合成を行った。抗ヒスタミン性を有する化合物の生産に関与する酵素類は、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの、カラムクロマトグラフィーにより精製を行っている。植物培養細胞を生体触媒として使用するバイオトランスフォーメーションにおいては、植物培養細胞を3日間、前培養を行い、外来の基質をDMSOで懸濁して可溶化した溶液を投与し、反応を2日間行った。植物培養細胞と培養溶液を、フィルターを使用して濾過する事により分離した。培養溶液は、酢酸エチルおよびブタノールにより分配抽出を行うことにより、生成物を得た。植物培養細胞は、ホモジナイズの後、メタノールにより、12時間浸漬する事により生成物の抽出を行った。このメタノール抽出物を濃縮後、水と酢酸エチルにより、分配抽出を行った。水層はさらに、ブタノールにより抽出する事により、ブタノール抽出画分を得た。生成物の確認は、LC/MSおよび、核磁気共鳴法により、化合物の化学構造を決定した。その結果、植物培養細胞の酢酸エチル抽出画分に、生成物が抽出されていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ヒスタミンの遊離を抑制させる、抗ヒスタミン作用を持つ物質の合成を行うことであり、本年度は、生体触媒を使用するバイオトランスフォーメーションならびに、反応に関与する酵素の検討を行っており、当初の目的通りに、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、抗ヒスタミン作用を持つ広範な、より活性の高い化合物の合成を行う。それに際し、まず、当研究室が保有する植物培養細胞である、ニチニチソウ植物培養細胞、タバコ植物培養細胞、ヨウシュヤマゴボウ植物培養細胞、イモ植物培養細胞、キョウチクトウ植物培養細胞、ユーカリ植物培養細胞を使用して、外来の化合物の変換反応を行い、最もヒスタミンの遊離を抑制させる、高い抗ヒスタミン作用を持つ物質の合成を行うため、所有する植物培養細胞のスクリーニングを行う。特に、これまでの当研究室の研究により、他の反応において高い変換活性を示しているニチニチソウ植物培養細胞、ヨウシュヤマゴボウ植物培養細胞、ユーカリ植物培養細胞についてはバイオトランスフォーメーションにおける反応条件として、光照射の有無、反応温度、反応時間を検討するためのタイムコース実験などの検討を加え、高い変換活性を得られる反応条件を検証する。高い変換活性を有することが確認された植物培養細胞については、さらに反応に関与する酵素を、植物培養細胞から抽出を行い、精製を行う。反応に関与する酵素は、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの、カラムクロマトグラフィーにより精製を行い、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動により、単一バンドとして酵素を得る。得られた酵素は、可溶化した基質溶液と反応に必要な補因子とともに12時間のインキュベーションを行うことで反応を行い、得られる生成物を、LC/MSおよび、核磁気共鳴法による各種のスペクトル解析により化学構造を決定する。
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