研究課題
本年度は、植物培養細胞由来の糖転移酵素を用いた、スチルベン骨格を有する化合物や、フラボン骨格を有する化合物を基質として変換反応に供し、生成物を液体クロマトグラフィーにより精製を行い、変換生成物の構造決定を行った。抽出過程においては、酢酸エチルおよびブタノールにより分配抽出を行うことにより、粗抽出物を得た。生成物の確認は、LC/MSおよび、核磁気共鳴法により、化合物の化学構造を決定した。その結果、レスベラトロールを基質として用いた場合には、3位と4’位のフェノール性水酸基に位置選択的に糖転移反応が生起し、それぞれのモノグルコシドを生成物として与えた。一方、クエルセチンを基質として使用した場合には、位置選択的な糖転移反応が生起する事が明らかになった。植物培養細胞を使用したバイオトランスフォーメーションの結果では、糖転移酵素による反応により、3位のフェノール性水酸基に位置選択的に糖転移が生起して、モノグルコシドを生成し、さらに、3’位のフェノール性水酸基に位置選択的にメチル化が生起して、イソラムネチンのモノグルコシドを生成物として与えた。本年度は、さらに、植物培養細胞由来の糖転移酵素について、大腸菌を使用した発現を行った。すなわち、大腸菌を用いて植物培養細胞由来の糖転移酵素を大量発現し、各種クロマトグラフィーによって精製をおこなった。精製酵素を用いて、アクセプター分子であるレスベラトロールおよびドナー分子アナログであるUDP-2F-グルコースとの複合体の結晶化条件を探索した。ポリエチレングリコールを沈殿剤とする条件で良質な結晶が得られたので、大型放射光施設SPring-8 BL44XUにてX線回折強度データを収集した。既知の糖転移酵素の構造をモデルとした分子置換法により位相決定をおこない、2.6Å分解能での構造決定に成功した。
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Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 81 ページ: 226-230