研究課題/領域番号 |
15K05583
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
加納 博文 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60334166)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 環境負荷低減物質 / 二酸化炭素貯蔵 / アルカリ金属炭酸塩 / カーボンアエロゲル / ナノコンポジット |
研究実績の概要 |
本年度は、K2CO3とカーボンアエロゲルナノコンポジットの湿潤条件下におけるCO2吸蔵反応と加熱分解挙動について検討した。 従来法に従って、細孔径が7, 16および18 nmである異なるカーボンアエロゲル(xCA:x=7, 16, and 18)を調製した。これら3種類のxCAをK2CO3溶液に浸漬し、xCAとKHCO3のナノコンポジット(xCA-KC)を得た。77 Kでの窒素吸着や273KでのCO2吸着および303 Kでの水吸着等温線とX線回折測定からKHCO3がCAとコンポジットを形成していることを確認した。3種類のxCA-KCの湿潤下におけるCO2吸蔵特性とその後の加熱分解挙動について調べた。3つのxCA-KCは2段階の重量減少を示し、低温側では細孔に存在する物理吸着した水や炭酸が脱着するためと考えられた。2段階目の減少はKHCO3からK2CO3の変化で、いずれもバルクのKHCO3より低温で分解することが分かった。また、分解温度は細孔径が小さいほど低温にシフトすることを見出し、ナノコンポジットの効果を確認できた。 加熱分解して得たxCA-KCを313 Kにおいて湿潤下でCO2を通すと重量の増加が認められた。xCA-KC中のK2CO3含量を見積り、KHCO3からK2CO3への反応を仮定して求めたCO2吸蔵量と、化学分析により算定した実際のCO2吸蔵量を求めた。xCA-KC 1 g当たりのCO2吸蔵量は、K2CO3の担持量が20%前後と低いため、それほど高くないが、K2CO3 1 g当たりに換算すると理論容量7.24 mmol/gを大きく上回った。これはK2CO3によるCO2吸蔵以外に、残っている細孔にCO2や水が物理吸着することや、吸着した水にCO2が溶けて炭酸になるという反応が進行するためと考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭酸カリウムとカーボンアエロゲルのナノコンポジットを調製し、ナノ細孔内で炭酸カリウムが形成され、CO2吸蔵後の再生温度がナノ細孔径に依存して変化することを見出し、ナノ粒子化により炭酸水素カリウムから炭酸カリウムに再生するための条件を緩和することができた。このように、当初の研究計画を実施することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
熱分解を容易にするための方法として、結晶構造の不安定化が考えられるため、Kイオンより大きなCsイオンでK2O3の結晶格子を一部置換し、不安定な結晶を調製し、この試料の熱分解挙動や湿潤下におけるCO2吸蔵反応特性を調べる。 また同様の方法により、K2CO3よりCO2吸蔵特性に問題の多い、Na2CO3の構造を大きく不安定化させるために、2価のCa2+やMg2+によるNa+の置換の効果を調べる。 これら吸蔵反応において出入りする熱を用いてケミカルヒートポンプへの応用について検討し、CO2固定化技術や運搬用のキャリアとしての応用など、CO2利用、固定化技術への展開について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初カーボンメソ細孔体として、二酸化炭素超臨界抽出を利用するカーボンアエロゲルを用いることを考えていたが、二酸化炭素超臨界抽出装置を用いず、凍結乾燥法を用いるカーボンクライオゲルを調製することで対応できることを見出した。二酸化炭素臨界抽出装置に用いる物品、消耗品、寒剤について物品費として計上していたが、これらを使わなくて済んだたため当該助成金が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度以降、ナトリウムやカリウムの炭酸塩とマグネシウムやカルシウム金属炭酸塩の量比が異なる固溶体を調製して、湿潤下での二酸化炭素吸蔵特性を調べる予定であるが、化学工学的検討を行う際に、やや大きなスケールでの実験を行う必要があるので、当該助成金と翌年度請求した助成金を合わせて有効に活用する予定である。
|