湿潤下でのCO2吸蔵材として有望なK2CO3やNa2CO3は理論上の吸蔵量は大きいが、反応速度が遅いとか、再生温度が高いなどといった問題点がある。本年度は、特に材料として安価なNa2CO3の問題点を克服するために、炭素材料とのナノコンポジットを調製し、構造の不安定化を誘起し、CO2吸蔵反応の促進効果があるかどうかを調べた。 試料は以下のように調製した。0.1 モルのテレフタル酸と0.2モルのNaOHを200 mLの水に入れ1時間撹拌して溶解し、353 Kで2日間乾燥し、その後窒素気流下で873 Kで2時間焼成した。得られた試料についてキャラクタリゼーションをするとともに、水蒸気共存下のCO2吸蔵量は熱重量分析 (TG-DTA) およびX線回折 (XRD) 法で構造変化を検討した。 XRD測定から、主成分はNa2CO3と炭素であり、ラマン散乱測定及びSEM観察とEDS測定からNaHCO3として46%からなる炭素とのナノコンポジットであると見積もられた。TG-DTAの測定ではN2雰囲気下、473 Kで10分間加熱することでNa2CO3に分解し、その後313 K、湿度50 %のCO2雰囲気下でCO2吸蔵反応を2サイクル繰り返した。CO2吸蔵量は、コンポジット1 gあたり、約230 mgと見積もられた。10回の繰り返し実験から、分解温度が10 Kほど低下し、反応速度は10倍以上も速くなることが明らかになった。これはNa2CO3が炭素とのコンポジットを形成することでナノ構造化され、CO2吸蔵が容易に進む環境にあるためで、より低い温度で分解反応が進行し、CO2吸蔵反応もより低い活性化エネルギーになることが分かった。 これまでの実験結果をもとに、CCS技術における本CO2吸蔵材の応用性について検討し可能性をまとめた。本内容については、国内技術情報誌や欧文書籍として発表した。
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