研究課題/領域番号 |
15K05584
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 満 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (10143679)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ドライ物質調製 / 二酸化炭素吸収性能評価 / 再利用可能性評価 |
研究実績の概要 |
ドライイオン液体調製に必要な50%程度の水分添加条件においても高い二酸化炭素吸収性能を発揮するアミノ酸(グリシン、アラニン、リジン)系イオン液体についてその性能評価を行った。グリシンとアラニン系イオン液体ではドライ物質とすることで約50倍の吸収速度加速効果が認められた。また、水の代わりにポリアリルアミン水溶液を加えることで、グリシン系イオン液体とポリアミン単独の吸収量の和よりも大きな吸収性能を示すことがわかった。この機構は不明であるが、イオン液体/ポリアミン水溶液から調製したドライ物質は既存の吸収剤と比べても優れた性能を示すことが明らかとなった。一方、アミノ基を2つ持つリジン系イオン液体では、より高い二酸化炭素吸収性能を示すと期待されたが、実際イオン液体1モルあたりの二酸化炭素吸収量は他の系の2倍ほどであったが、60%水分含有系でもスフレ状となり、粉末状のドライ物質は得られなかった。 実際に応用する場合、吸収剤の再生、すなわち吸収した二酸化炭素の脱着は必須な過程となるが、80℃で加熱したところ、ポリアミンを含まない系では約10%程度しか吸収能の低下はみられなかったが、ポリアミン添加系では80%以上も低下してしまった。これはポリマーアミノ基間にウレタン結合が不可逆的に生成されるためと考えられる。一方、加熱により失われた水分は、100%湿度環境下に放置することでほぼ元の水分含量へ戻ることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イミダゾール系イオン液体に比べ安価で調製の容易なアミノ酸系イオン液体に付き、ドライ物質の調製に成功した。特にグリシン系のイオン液体は容易に粉末状のドライ物質を調整することができたが、アミノ基を2つ持ち、二酸化炭素吸収能力が高いリジン系イオン液体を用いた場合は、スフレ状の物質しか得られなかった。一方、グリシン系イオン液体にポリアミンを共存させた系では高い吸収性能を確認することができた。ポリアミン共存系での再利用可能性は低いことがわっかったが、加熱処理に伴い失われる水分の補給は容易に行えることがわかった。
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今後の研究の推進方策 |
ポリアミン共存系で、加熱処理に伴いウレタン結合が生じるのを防ぐため、前もって化学架橋の導入を試みる。大きく膨潤した緩いゲルとすることでポリマー鎖の接近が妨げられ、加熱再生可能な二酸化炭素吸収剤が得られるものと期待される。ゲルとすることで吸収速度は低下するが、機械的強度と吸収能力の増大とのバランスを考慮して調製条件を調整する。 リジン系イオン液体でパウダー状ドライ物質が得られなかった原因は側鎖の長いメチレン鎖の疎水性にあると考え、メチレンの一つ短いオルニチンについてドライ物質調製と二酸化炭素吸収性能評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた高額なイオン液体を購入せずとも、安価な薬品により代替物を調製できることがわかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
イオン液体を大量に必要とするゲル系の研究用に当てる。
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