研究課題/領域番号 |
15K05587
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
米村 俊昭 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (90240382)
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研究分担者 |
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70270999)
上田 忠治 高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (50294822)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 環境対応 / 複合材料・物性 / ハイブリッド化合物 / 光学活性 / 合成化学 / イオン結晶 |
研究実績の概要 |
今回のテーマでは,様々な環境で有機金属化合物や錯体が形成する固有の構造とそれらの機能発現メカニズムの関係についての考察から,環境応答性を有する無機-有機ハイブリッド化合物の開発を目指す。 水素結合可能な置換基を有するピリミジンチオレート誘導体を用いた単核コバルト(III)錯体の合成およびそれらを前駆体としたコバルト-銀ヘテロ多核錯体の合成を行い,立体選択性に及ぼすチオラト配位子の影響について置換基の違いをもとに比較,考察した。ピリミジン環上の置換基をヒドロキシ基とアルキル基の組み合わせによって変化させた配位子を用いることで,置換基の空間的な配置が異なる2つの結合異性体のうち一方のみを選択的に合成した。反応物質およびpHや温度等の反応条件を詳細に検討することで,立体特異的な集積型多核錯体の合成法を確立した。単離した化合物は,単結晶X線構造解析やNMRスペクトル等に基づいて構造決定を行った。さらに,それらの可視-紫外吸収・赤外吸収スペクトルやマススペクトル等を測定することにより,立体化学的,分光化学的性質についても検討した。アミノ基を有する場合と同様に,一連の選択性の発現は,カルボニル酸素原子とトリス(2-アミノエチルアミン)およびエチレンジアミンのアミンプロトンとの間の水素結合の形成による安定化に起因していると考えられた。 また,pHをコントロールすることで,ピリミジン窒素上でプロトンの脱着が起こり,容易に相互変換(異性化)することも確認した。それら単核錯体と銀イオンとの多核化反応を行ったところ,プロピル基のような嵩高い置換基が存在した場合に,共存アミン配位子がトリス(2-アミノエチルアミン)の場合では同一の生成物が得られたのに対して,エチレンジアミンの場合には窒素上のプロトンの有無によって異なる多核錯体の生成が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
置換基が異なる芳香族チオール配位子あるいは異なる共存アミン配位子を用いることでも立体選択的にハイブリッド錯体を合成することができた。反応物質およびpHや温度等の反応条件を詳細に検討することで,立体特異的な集積型多核錯体の合成法についての有用な知見を得ることができ,国内学会(英語での発表を含む)で発表した。今年度は,環境応答型金属錯体の立体選択性に及ぼす芳香族配位子の置換基の影響についての確認を優先したため,予定していた光学活性を有する環境応答錯体の開発は次年度に実施することとした。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き,多核錯体形成時における電子移動と立体特異性との関連について明らかにすることを目的として,種々の反応場における立体特異的な合成を検討し,合成法を確立する。前年度の研究成果をもとに,反応場が立体選択性に及ぼす影響にも注目しながら,水素結合の形成が可能な芳香族・脂肪族チオール配位子を用いたキラル錯体の合成ならびに不斉反応について検討することで,キラル増殖型集積化反応のメカニズムを解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の計画に基づく経費執行において研究費に残額が生じた理由は,年度末に予定していた新規化合物の熱分析測定が装置の故障により実施できず,翌年度に修理を行った上で測定を行う必要が生じたことによるものである。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度には上記の点を補い,その他は当初の予定通りの使用を計画している。
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