本課題では、重要なリサイクル資源である廃プラスチックを効果的に選別回収するために必要となるプラスチックの種類や劣化の程度をオンライン・リアルタイムで計測可能な技術の開発を目指した。これまでに、①ラマン分光法の特長を生かしつつ、迅速簡便な測定が可能な装置の試作、②熱物性を明らかにした促進暴露標準劣化サンプルの作成、③ラマンスペクトルのいくつかのピーク強度と劣化熱物性との相関、④銀ナノ粒子表面増強ラマン(SERS)による信号増強の検討、⑤精度向上のための数値解析によるノイズ除去方法の検討を進めてきた。装置のハードウェア的な性能は、用途を考慮すると対費用効果などからある程度の完成を得たと判断し、平成29年度は主に、数値解析によるプラスチックの種類や劣化の判定方法の検討、銀ナノ粒子によるラマン信号の増強につき研究を進めた。 分光スペクトルの判定手法は数多く提案されているが、本課題の用途では高速性を重視して開発に当たった。その中で判定に使用するピークの選定にサポートベクターマシン(SVM)による識別精度の高低が利用できることを明らかにした。そうして選択された数本のピークに対して主成分分析(PCA)を適用し、パラメータを2つに絞込み、それにSVMを適用することで、行列計算など必要とせず、単純な演算で結果が得られる高速でかつ高精度なプラスチックの識別が可能なことを示した。PCAを適用した方法では電気的なホワイトノイズに耐性があることも示した。 銀ナノ粒子によるSERS効果は市販のSERS基板に比べて同等、あるいはそれ以上であったが、発現が粒子の凝集状態に依存していると考えられ、不安定であった。そこで、㈱伊都研究所の特許技術であるクレイナノ粒子と銀ナノ粒子との複合化技術を使用し、SERS基板を作成し、5000倍から25000倍の増強効果が安定に得られる技術を開発した。
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