研究実績の概要 |
平成26年度までに水酸化ナトリウム水溶液を酸化タングステンに表面処理することで、可視光照射下の光触媒活性が酸化タングステン単独に比べて大いに向上することを報告してきた。そこで、平成27年度は他の各種アルカリ材料で酸化タングステン表面を表面処理することにした。その結果、水酸化カリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ナトリウム処理によりそれぞれ可視光照射下の光触媒活性が向上することが分かった。なお、光触媒活性はIPA(イソプロピルアルコール)の気相分解反応を用いて評価した。一方、同じNa成分でも塩化ナトリウムを担持しても、活性の向上は非常に限定的であった。このことから、アルカリ処理はそのアルカリ種に関係なく、酸化タングステン光触媒の光触媒活性を向上させることに有効な方法であることが確認できた。 上述したアルカリ成分は水などの水溶液に可溶であるため、光触媒を素材や基板などにコートする際に用いる光触媒コーティング液からアルカリ成分のみが離脱し、十分な光触媒活性が得られないことが生じる可能性がある。そこで、比較的水や水溶液に溶けづらい難溶の固体塩基成分を探索し、それを酸化タングステンに表面処理あるいは酸化タングステンと複合化することにした。様々なキャラクタリゼーション、材料探索を行った結果、ビスマス酸ナトリウムを酸化タングステンと複合化した材料が優れた可視光光触媒特性を有することを発見した。その成果は、国際誌APL Materials (Kako et al., APL Mater., 3 (2015) Art No. 104411)に論文として掲載された。
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