研究課題/領域番号 |
15K05591
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
加古 哲也 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究員 (00399411)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光触媒 / 固体塩基 / 環境浄化 / 可視光 |
研究実績の概要 |
平成27年度までにおいて、水酸化ナトリウム、水酸化ストロンチウムといった水溶性のアルカリ、そしてビスマス酸ナトリウムといった固体塩基を酸化タングステンに担持することで光触媒活性が改善することを明らかにしてきた。そして、担持することによっても、光吸収特性はほとんど減少しなかった。平成28年度はそれらの知見を他のn型半導体光触媒に適応し、それらの光触媒活性の改善を図った。酸化バナジウム、酸化ビスマス、ビスマス酸スズ、リン化ホウ素など様々な半導体についてアルカリ処理による活性向上の検討を行った。 その結果、酸化ビスマスにアルカリを担持することで、ガス状のアルコール(2-プロパノール)を分解してできる二酸化炭素の生成速度が4倍以上改善し、また、新規可視光応答型光触媒であるリン化ホウ素もアルカリを添加することで活性が大幅に上昇することを明らかにした。このリン化ホウ素は酸処理、アルカリ処理によっても分解せず非常に安定な材料であることも見出した。 また、前年度までに明らかにしてきたように酸化タングステンの場合、アルカリ処理によって表面の一部にタングステン酸ナトリウムが生成する場合があるが、その内部のバルクは変化せず、酸化タングステンのままキープされている。その表面に存在するナトリウムサイトを鉄イオンでイオン交換したタングステン酸鉄を酸化タングステンに担持すると、イオン交換前に比べて10倍以上向上することも明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は他の光触媒への応用可能性について検討し、酸化ビスマスやリン化ホウ素などでアルカリ処理により活性の増大が確認された。また、酸化タングステンをアルカリ処理した時にできるアルカリタングステンのアルカリサイトを鉄イオンでイオン交換することによって活性が改善することも併せて確認でき、さらなる高活性化への道筋がより明らかになったと言える。それゆえ、当該年の目標をクリアーしているといえ、概ね順調に研究が進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度に引き続いて、高活性なn型半導体を用いた、固体塩基担持可視光吸収光触媒材料の開発を行う。n型半導体の場合は、概して還元力が不足で、そのため、電子が消費しづらく、触媒中に電子が蓄積し、その結果、ホールと過剰電子が再結合し、活性の低下がもたらされる場合が多いが、p型半導体の場合は逆に還元力は強いが、酸化力が不足している場合が多いように思われる。 そこで、十分な還元力を持つp型半導体にも着目し、固体酸・塩基の担持によりバンド構造を最適化し、すなわち、固体酸・塩基の担持によりp型半導体の酸化力を強くし、高活性な可視光応答型光触媒材料の開発を行う予定である。 そして、得られた成果をまとめて、研究発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
光触媒の比表面積の測定に利用する部品を購入予定であったため、業者から見積もりをとった。その当初の見積もりでは3月末までに納品されるということであったため、その納期を信じ、発注をした。 ところが、3月末直前になり業者から納期が大幅に遅れ、年度内には納品できないとの連絡が入ったため、やむなく契約を取り消した。しかし、この部品は必要なため、購入しようと考えており、その代金分が結果として、次年度使用(予定)額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この部品は比表面積測定に必要なため、早急に再度見積もりを依頼し、業者に注文する予定にしている。
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