研究課題/領域番号 |
15K05592
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平石 知裕 国立研究開発法人理化学研究所, 前田バイオ工学研究室, 専任研究員 (20321804)
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研究分担者 |
朝倉 則行 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (40401559)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ラッカーゼ / 環境メタゲノム |
研究実績の概要 |
ラッカーゼは様々な芳香族化合物を酸化する能力を有しており、染色・脱色・エンジニアリングプラスチック合成などに活用されているが、反応によっては大量の酵素が必要である。主要な市販ラッカーゼは真菌(カビ・キノコ)由来であり、異種発現による大量生産や遺伝子工学による高活性化・高機能化が難しい。さらに現在使用可能な全ての酵素は、環境中の培養可能な1 %未満の微生物から得られたものであり、残り99 %の微生物資源の有効利用が望まれている。そこで本研究では、環境試料から直接DNAを抽出してメタゲノムライブラリを作製し、ラッカーゼ活性を指標としたスクリーニングを行い、難培養微生物由来新規ラッカーゼの獲得を目指す。さらに、基質スクリーニングを行った後、機能性材料開発を目指した酵素の高性能化・高機能化を行う。 本年度は、平成27年度に構築したライブラリを用い、(1)ラッカーゼ活性を指標にしたスクリーニング、及び(2)PCRによるスクリーニングを実施した。その結果、(2)PCRによるスクリーニング手法で目的酵素遺伝子の獲得を試みたところ、部分配列ではあるもののラッカーゼと思われる配列を有するクローンが得られた。 また平成27年度において、大腸菌由来ラッカーゼも有用な触媒になり得ることが示唆された。そこで、本酵素の基質スクリーニングを行ったところ、本酵素は様々な芳香族化合物の酸化反応を触媒できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本申請研究では、メタゲノムスクリーニングによって難培養微生物由来の新規ラッカーゼを獲得するとともに、この酵素の進化工学による高性能化を計り、得られた人工進化酵素による機能性材料の合成反応を目標としている。 本年度は2種類のスクリーニング法による目的酵素遺伝子の取得を試みたが、構造遺伝子全長を得るまでには至らず部分配列の獲得にとどまったため、当初の予定よりやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、PCRを用いたメタゲノムスクリーニングによって、ラッカーゼ遺伝子部分配列が得られたことから、平成29年度は引き続き構造遺伝子全長の獲得を目指す。 また、大腸菌由来ラッカーゼの系についても、高機能高分子材料合成を目的とした高性能化・高機能化を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度においてやや遅れ気味であった結果、本年度実施予定であった実験に必要な機器や消耗品の購入を平成29年度に延期したために残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では、PCRを用いたラッカーゼのメタゲノムスクリーニングを行うとともに、大腸菌由来ラッカーゼの高機能化・高性能化を実施する。そのために必要な遺伝子増幅装置を購入する予定である。一方、消耗品についてはランダム変異導入用試薬など高額な生化学試薬が必要となる上、使い捨てのプラスチック器具を多用する予定である。さらに、多数のクローンに対して遺伝子解析が必須であることから、その際に使用する生化学試薬及び消耗部品の購入費用を計上した。
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