研究課題/領域番号 |
15K05593
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中山 敦好 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (10357676)
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研究分担者 |
山野 尚子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (20358279)
川崎 典起 国立研究開発法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 主任研究員 (70344158)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 生分解 / 光触媒 / トリガー / 抗菌 / 加水分解 / カプロラクトン / ポリ乳酸 |
研究実績の概要 |
生分解性ポリマーは微生物作用により資化される環境低負荷な材料として農業用資材などとして用いられているが、生分解が刻々と進行し、使用中においても生分解、物性低下が起こる。そのため、材料としての信頼性に乏しい。そこで、使用後になってはじめて生分解が始まる、といったスイッチング機能、トリガーが必要であり、そうした外部因子として「光」を検討した。従来の光触媒/生分解性複合材料は光分解生分解性材料であり、「分解」を促進するのに対し、我々は光酸化力を抗菌力として利用することで、今までの考え方と正反対に、光を生分解の抑制に活用することを検討した。生分解性ポリマーとして、コポリ(カプロラクトン/乳酸)を主として用い、光触媒は昭和電工製ルミレッシュ(Cu/TiO2)を用いた。複合化は超音波処理により均一化したクロロホルム溶液からキャスト法でコンポジットフィルムを作成した。生分解性はリパーゼ加水分解及び土壌分解試験にて評価した。 酸化チタン担持キャストフィルムの土壌中での生分解は、太陽光を遮断した場合、光触媒の含有率に関わりなく、一定速度で重量減少し、一ヶ月で半減した。土壌内部に埋設した場合も多少のばらつきは出たが、いずれの試料も土壌表面に並べた場合よりもさらに速く生分解が進行した。それに対し、太陽光暴露した場合、酸化チタンの含有率によって生分解に差が生じ、樹脂のみの場合は速やかに生分解されたが、0.5wt%以上の含有で重量減少は大きく抑制された。また、リパーゼ加水分解試験をリン酸バッファー中、光照射インキュベータ内で行ったところ、光照射の有無により明確な差異が認められ、0.5wt%の場合、約20%加水分解が抑制された。さらに、光触媒含有フィルムの抗菌性を大腸菌にて調べたところ、0.3wt%以上の含有で大きな抗菌活性が認められた。別途、土壌から単離したポリエステル分解菌でも同様の結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光触媒の生分解性材料へのコンポジット化をポリエステル系樹脂を対象に行った。光触媒含有生分解フィルムは光に応答した表面抗菌力により、生分解のスイッチングが可能であることを確認し、その成果を学会発表及び学術論文投稿により成果発表した。しかしながら、照度と生分解性との関係など細かな検討が後回しになった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度検討しきれなかった材料表面の分析、照度の影響について明らかにし、2年目以降は初年度と入れ替えになったポリアミド系樹脂や他の樹脂も対象にコンポジット化を進め、応用性のある研究成果を得る。 1.光触媒コンポジットの作成:ポリアミドでは水素結合によるアンカー効果により光触媒の固定化が補強されるが、ポリ乳酸や各種脂肪族ポリエステルとの混合では、生分解の進行に伴う光触媒の樹脂からの脱離の可能性があるのでその評価を行い、必要に応じて、末端に水酸基等の置換基導入を検討する。 2.暗所下での光触媒コンポジット材料表面の解析:1の光触媒含有樹脂に関して、ポリアミドと同様の手法により、フィルム表面の親水疎水性、タンパク・微生物の吸着性と抗菌性について調べる。 3.照度と生分解性との関係の検討:27年度に引き続いて、ポリアミド系の光触媒コンポジットの生分解性について、解析を行う。担持量を室内環境で抗菌発現される最少量に固定し、照度をパラメータとして抗菌、生分解の挙動を調べる。Cu/WO3系では弱い可視光でも光分解が無視できなくなる可能性があるので、Cu/TiO2系とは分けて、検討する。また、ポリアミド系以外の樹脂についても光触媒担持量と照度とをパラメータとして生分解挙動を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
作成した各種光触媒含有生分解性材料を用いて、照度など各種パラメータを振った条件下でのルーチン化された生分解性評価を実験補助員を雇用して行う予定であったが、各種光触媒含有生分解性材料の作成が予定より遅れたため、実験補助員を雇用しての評価実験は次年度に回したため、予定していた人件費分が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した分を用いて、次年度に実験補助員を雇用して生分解性評価実験を行う。
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