研究実績の概要 |
本年度はまず、前年度に見いだしたペリレン誘導体(PTCBI, n型)と鉛フタロシアニン(PbPc, p型)からなる有機p-n接合体系光触媒材料(以下、ITO/PTCBI/PbPcと略す)について、より詳細な検討を行った。ITO/PTCBI/PbPcを光アノードとして用いて、その安定性をFeII(CN6)4-(電子ドナー)存在下で調べた。1時間の反応時間を1サイクルとして、ITO/PTCBI/PbPc を10サイクル繰り返し使用しても、各サイクルあたりの活性(アウトプット=還元生成物である水素発生量)はほぼ一定の値を示し、累積の水素発生量とサイクル数は一次の相関を示した。この結果から、本光触媒材料の比較的長期にわたる耐久性が確認された。 また、可視~近赤外光に応答するPTCBI/PbPc系光触媒材料の有効性を一層確かなものとするために、バンドパスフィルターRT830を用いて近赤外光のみを照射する方法で光触媒実験を行った。近赤外光の照射だけでもPTCBI/PbPc系では光触媒反応が進行した。その一方で、p型層として可視光のみを吸収する無金属フタロシアニン(H2Pc, p型)を用いたPTCBI/H2Pc対照系では、同様の照射条件下でも光触媒反応は起こらなかった。以上のことから、本研究を通して、より効率的な光触媒反応を進めるためには、広域太陽光に応答する光触媒材料の適用が有効であることを実証することができた。
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