研究課題/領域番号 |
15K05596
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中崎 城太郎 東京大学, 先端科学技術研究センター, 助教 (10444100)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽電池 / ペロブスカイト / ポルフィリン |
研究実績の概要 |
本研究では、有機鉛ハライドペロブスカイト太陽電池に色素を導入し、600~800nm付近の吸収を補強することを目指している。ペロブスカイト太陽電池に改良を加えるにあたり、まずは基本構造となるデバイスを再現性よく作製できることが重要である。ペロブスカイト太陽電池の特性は、作製方法だけでなく、作製環境などの影響も受けやすく、再現性を確保することが難しいとされている。このため、標準的な作製手順を確立すべく文献等を十分吟味するとともに、今年度導入したスピンコーターを用いて製膜条件を検討した。実際に原料溶液を調製してみると、溶解度や溶液の色が文献とは異なるようであった。原料の純度や作業環境によってこれらが影響を受けていることが考えられ、本研究場所での最適条件を確立するために溶液濃度等を変更して試行することが必要になるとみられる。製膜した試料をアニール(加熱処理)する際に、実験室内のどこで行うかということでも着色状態が変化した。このような環境の影響をできるだけ制御できるように工夫する必要がある。 一方、文献については多数のものを詳しく調べたため、これをまとめて総説として執筆した。平成27年度の実績に記載した1報に加え、既に3報の掲載が確定している。ペロブスカイト太陽電池は数年で急成長した分野であり、まだ情報が整理されていない。この文献調査自体は他のプロジェクトの一環で行なったものであるが、整理した文献情報は、本研究において重要なものであり、また他の研究者にとっても有用なものとなると期待される。 色素については、ポルフィリン系色素の一部が準備できている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、年度途中での追加採択となったため、申請時に比べると非常に期間が短く、1年間かけて行うことを計画していたものを基準にすると遅れていることになってしまうが、開始後およそ半年の時点で想定していたレベルには達している。この期間中に、器具、材料、試料作製環境などを揃え、具体的な条件検討に入るためのセッティングを完了した。また、色素については以前から手掛けているものを適用する予定であるので、ポルフィリン系色素が一部準備できた段階である。多くの文献調査も行なっており、28年度に入り、実際にペロブスカイト太陽電池のデバイスを作製し、条件検討を加速して研究を遂行できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、ペロブスカイト太陽電池のデバイスを実際に作製して検討を行なっていくが、中でも逆構造型デバイスの作製条件の検討に注力する。逆構造型デバイスは、透明導電電極上に、電子供与体層、ペロブスカイト層、電子受容体層、対極の順で積層した構造である。ペロブスカイト太陽電池への色素の導入は、受光面に対し、ペロブスカイト層の背後となる部分で行いたいが、電子受容体材料のほうが色素を導入しやすく、これがペロブスカイト層の背後にある逆構造型のほうが有利と見られるためである。色素がペロブスカイトより先に光を吸収すると、効率の高いペロブスカイトによる発電を邪魔することになりかねない。順構造型のセルについては、研究室内の研究者とも情報交換することが可能であるが、逆構造型については自ら開拓しなければならない部分が多いため、検討により時間をかける必要があるためでもある。比較的親水性の基板に製膜する順構造型とは異なり、逆構造型の基板は疎水性が高くなるため、ペロブスカイト層を製膜する前に、アルキルアミン処理することも検討する。また、電子輸送材料としてフラーレン誘導体だけでなく、酸化亜鉛などを製膜する条件を検討し、色素を導入しやすくする。 一方、比較的作製条件が確立されている順構造デバイスで、酸化チタン層にポルフィリン色素を吸着させたものを作製してみる。色素増感効果という観点では勝算が低いが、酸化チタンとペロブスカイトの間の接触が悪いことが既存デバイスの課題となっており、ここに単分子層程度の色素層が入ることで、両者の接触が改善されれば効率向上に寄与することが期待される。 平成29年度には、逆構造デバイスでの色素導入を行い、その効果を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は年度途中で追加採択され、申請時に比べると非常に期間が短かったため、期間内に申請時の計画事項全てを実施することはできなかった。この部分は計画を見直して28年度以降に加速して行うこととしており、28年度での使用額が増える形で遂行する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度分の未使用分は、28年度中に実施する実験での消耗品費として使用する予定である。
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