研究課題/領域番号 |
15K05597
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
馬 廷麗 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 教授 (20380545)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 太陽電池 / 無機ダブルペロブスカイト / 鉛フリーダブルペロブスカイト / 耐久性 / バンドギャップ制御 / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
近年急速に発展してきたペロブスカイト太陽電池は、次世代太陽電池技術として期待されている。しかし、耐久性が悪く、また規制された鉛を使用するため、実用化には問題がある。本研究では高性能かつ耐久性に優れた太陽電池の開発を目的として、研究を行った。 具体的に以下の研究を実施した。1)無機有機ハイブリッドペロブスカイト太陽電池の耐久性に影響する要因について検討した。2)耐久性が良いかつ無毒な鉛フリー無機ダブルペロブスカイトをデザインし、第一原理計算法による電子構造及びバンドギャップなどを計算した。またダブルペロブスカイト材料の組成及び構造の最適化を行った。3)第一原理の計算結果から3種類の鉛フリーペロブスカイトを選び、固相法及びゲル-ゾル法により合成を行った。得られた材料の結晶相及び配向性、粒子のサイズなどを評価した。またダブルペロブスカイトの組成及び微細構造は光学性能及び電気化学性能との関係を明らかにした。4)得られた材料を用いて、光電変換デバイスを構築した。デバイスの光電変換特性を調べ、電子寿命、拡散定数、過度電流・電圧応答などを測定し、詳細なメカニズムについて検討した。5) 太陽電池の吸光層の作製については、異なる二種類の濃度のプリカーサーを順次導入することにより結晶成長速度を制御し、表面被覆性に優れた光吸収層を作製できることがわかった。これにより電荷の再結合が抑制され、太陽電池性能が改善されることを実証した。本研究の成果は高性能かつ耐久性に優れたデバイスの材料設計の指針を示した。 研究成果として、5本の論文を国際誌にて発表し、また日本の国内学会及びアメリカ材料学会などの国際会議で招待講演または口頭講演を5件以上行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H28年度に行った実験は予定していた実験計画以上に進展した。その理由は下記の通りである。 近年急速に発展してきたペロブスカイト太陽電池は次世代太陽電池技術として期待されている。そのため、ペロブスカイト太陽電池は現在多くの研究グループで盛んに行われており、日々新しい成果が挙げられている。より優れたペロブスカイト太陽電池を生み出すには、多くの実験を行い、評価、開発を行わなければならない為、本研究室も多くの実験や評価、開発を行ったため、予定の計画より大幅に進んだ。さらにH29年の研究計画を前倒しで、以下の研究を行った。 1.無機ビスマスダブルペロブスカイトの薄膜を作製し、微細構造及び性質について調べた。SEM、XRDなどによりペロブスカイト薄膜の微細構造について検討した。またこの鉛フリーペロブスカイトの製膜性及び導電性、半導体性質、電子と正孔の形成状態などについて考察した。 2.得られたビスマスペロブスカイトを用いて、スピンーコートー方法により酸化チタンの緻密膜及び多孔質膜の上に、ペロブスカイト増感層を作製した。更に光吸収及び電荷分離を測定し、ペロブスカイトの光電荷の蓄積状態を評価した。最後にAu電極または独自に開発したカーボン電極を作製し、デバイスを構築した。I-VとIPCEより性能を評価したところ、作製したデバイスは優れた耐久性を有することがわかった。 以上が今年度の進捗状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の課題及び遂行策は下記の通りである。 1.無機ダブルペロブスカイトの薄膜を作製し、微細構造及び性質について調べる。SEM、XRDなどによりペロブスカイト薄膜の微細構造について調査する。鉛フリーペロブスカイトの製膜性及び導電性、半導体性質、電子と正孔の形成状態などについて検討する。 2.ペロブスカイトデバイスを構築、それらの性能について研究する。スピンーコートー方法により酸化チタンの緻密膜及び多孔質膜を作製し、その上に、選別した無機ダブルペロブスカイト層を作製する。光吸収及び電荷分離などを測定し、ペロブスカイトの光電荷の蓄積状態を評価する。また最後にAu電極または独自に開発したカーボン電極を作製し、デバイスを構築する。またI-VとIPCEの性能について評価する。 3.ペロブスカイトの強相関電子系性質及び磁場はデバイスへの効果について検討する。可視から赤外に及ぶ広帯域の過渡吸収分光測定を行い、光誘起絶縁体 /金属転移とそのダイナミクスを調査する。電子寿命、拡散定数、過度電流・電圧応答などを測定し、詳細なメカニズムについて検討し、高性能のデバイス構造を提案する。 4.デバイスの耐久性を検討し、耐久性が優れたデバイスを開発する。構築した無機ペロブスカイトデバイスの長期耐久性について、光を照射しながら、周囲の湿度を変化させ、光電変換特性の変化を調査する。有機無機ペロブスカイトと比較し、最適化を行う。高性能かつ耐久性に優れたデバイスを開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度に見込んでいた消耗品の金額が、見込み時の金額よりも安価で購入できたため、1,972円の差額が生じました。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度発生した差額の1,972円は次年度に不足している消耗品や薬品の購入に充てたいと思います。
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