研究課題/領域番号 |
15K05598
|
研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
信岡 かおる 大分大学, 工学部, 准教授 (10398258)
|
研究分担者 |
石川 雄一 大分大学, 工学部, 教授 (30184500)
北岡 賢 近畿大学, 工学部, 講師 (50457602)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | イオン液体 / ポルフィリン / 光 / 機能性色素 |
研究実績の概要 |
機能性色素として電気化学や光化学デバイスへの応用が期待されるポルフィリンJ会合体は、液―液界面や気―液界面,包接体などの特殊な環境下や複雑な構造のポルフィリン誘導体において形成されるため実用化が難しい。本研究は、単純な構造のポルフィリンを用い、イオンのみからなる媒体であるイオン液体中においてJ会合体を構築し、光エネルギーの獲得を目指すと共に,ポルフィリンに次いでイオン液体中において通常の媒体とは異なる分子挙動と光機能を示す色素の探索を行う。また,イオン液体自体に蛍光能を付与することで溶質ー溶媒間の近接した環境下での効率的な光エネルギー導出を目指す。 当該年度は、前年度に続いて蛍光能を有する機能性イオン液体の開発と、ポルフィリン会合体形成へ与えるイオン液体構造や添加物の効果を調査し、形成されたポルフィリン複合体の光特性を評価した。蛍光能を有する機能性イオン液体開発においては,色素部位へのイオン液体骨格の導入位置や接合部位構造の影響を粘性,融点といったイオン液体としての側面と光特性といった光機能性色素としての側面の両面から評価した。 また,今年度新たに取り組んだ課題として,凝集誘起発光(Aggregation-Induced Emission Enhancement:AIEE)特性を有する機能性色素に着目し,従来の水や有機溶媒とは異なるイオンのみからなる媒体であるイオン液体中およびイオン液体/有機溶媒混合系での挙動,並びに光特性を調査した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は蛍光能を有するイオン液体開発においてはイオン液体部位の構造と導入位置が物性に与える影響と新たな骨格を有する蛍光イオン液体の開発に取り組んだ。今回導入したイオン液体部位の構造においては,蛍光イオン液体の置換基の位置は蛍光波長には影響をほとんど与えないことが明らかとなった。また新たな骨格を有する蛍光イオン液体については合成途中である。 ポルフィリン会合体形成においては,酸性条件下でイオン液体の構造がポルフィリンのプロトン化や会合体形成に影響を及ぼし,それに伴い異なる蛍光能を有することが明らかになった。 最後にAIEE特性を有する色素に対し,有機溶媒へイオン液体を添加することで塩=イオン添加効果を調査し,イオン液体のアニオンが影響することが示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
蛍光分子は分子固有の励起波長と蛍光波長を持つ。このため次年度は新たな蛍光色素構造を有する蛍光イオン液体の開発に取り組む。イオン液体中でのポルフィリン会合体形成については会合体構造の解明に取り組む。 ポルフィリン以外の機能性色素分子への検討において,AIEE特性を有する色素についてイオン液体のアニオン構造効果が観察されたことから,次年度は条件を精査すると共に,酸性イオン液体などを用いた酸添加効果も調査する。最終的には開発した蛍光分子を媒体とした光エネルギーの効果的獲得につなげる
|
次年度使用額が生じた理由 |
分光測定用石英セルの納期の関係で次年度発注することにしたことに加え,研究の進行に応じて消耗品費を執行したため当初予定と執行額の差が生じたが,研究計画自体は概ね順調に進んでおり,次年度執行見込みも立っていることから問題はない。
|
次年度使用額の使用計画 |
当初予定していた使用計画に加え,新たに国際会議旅費としてスロベニアで開催される Liquids 2017, the 10th Liquid Matter Conferenceでの研究成果発表の旅費および参加費として使用する。また,分光測定用石英セルや真空ポンプなどの購入を予定している。
|