原子レベルで平坦かつ水素終端したSi表面へ界面活性剤の吸着膜を形成させ、Siの表面酸化の抑制および吸着膜の配向を議論した。このSi基板を電極として、電位を制御した場合のSi表面および吸着膜の変化を調べた。 作用極はATR-FTIR測定用のSiプリズムを用いて、RCA洗浄後に化学酸化膜を形成した。このSiプリズムの裏面にIn-Ga合金を塗布しオーミック接触によりCu板との導通をとった。参照極は自作のAg/AgClとし、対極はコイル状に巻いたPt線とした。脱イオン水を流通させながら測定したスペクトルをreferenceとし、次に5 % HFおよび40 % NH4F水溶液を流通し、原子レベルで平坦かつ水素終端したSi表面を形成した。続いて1×10-2 MのエーロゾルOT溶液を240分流通した後、open circuit 下でin-situ IR測定を行った。この段階でSi電極に-700 mV vs.Ag/AgClおよび+700 mV vs.Ag/AgClに電位をステップし経時変化を測定した。 電位の変化による吸着単分子膜の変化は、FTIRスペクトルよりopen circuit、-700 mV、+700 mVの電位における吸着単分子膜によるCHxピークを観察することで得た。open circuitと-700 mVでは共に時間が経っても吸着分子及びSi表面の状態は保持されることがわかり、一方+700 mVの場合にはピークが大きく減少することがわかった。この減少の原因は、疎水性であったSi表面が酸化されることによって、親水性の表面に変化が生じて疎水基で物理吸着していた界面活性剤が離れていくためであることが分かった。
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