研究課題/領域番号 |
15K05604
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山野井 慶徳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20342636)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 円偏光発光 / 光学活性 / 有機ケイ素 |
研究実績の概要 |
平成27年度はまず、アントラセンの9位と10位の2か所に不斉ケイ素原子を導入した化合物群の合成を検討した。これらは予備実験で検討した9位のみを化学修飾した化合物の不斉中心を2箇所に増やしたものである。9位にのみ不斉ケイ素原子を導入した場合の不斉収率は82%ee((R) : (S) = 91 : 9)なので、不斉ケイ素原子を2か所導入する際に各部位が独立で反応が進行すると仮定すると、反応剤として2-ヨードアニソールを用いた場合、不斉収率98%ee((R,R) : (S,S) = 91×91 : 9×9 = 99 : 1)の生成物を得ることができると予想される。実際に反応を行うと、予測通り99%eeの化合物を合成することができた。ケイ素原子上の絶対立体配置については単結晶X線構造解析にて確認した。再結晶を1度行うことにより、光学的に純粋な化合物(100%ee)を得ることができ、gCPLを測定したところ0.008程度の円偏光発光が見られた。さらにケイ素に結合する置換基をピレンに変化させた化合物群も合成した。ピレン骨格に不斉ケイ素原子を1か所並びに2か所導入した化合物を同様の手法で合成した。不斉収率はおよそ60%ee程度であったが再結晶並びに分取用HPLCを用いて光学的に純粋(100%ee)にした。これらの分子構造と光物性の相関を調査したところgCPLはおよそ0.01~0.005程度であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在研究成果を取りまとめており、ピレン誘導体の円偏光発光の測定を行った後、学外の共同研究者と議論を行い、近々論文に投稿予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度はπ共役系を拡張した化合物群の合成研究を行う。これらは平成27年度に合成したアントラセン部位をより大きなπ共役系を有する置換基(例えばテトラセン、ペンタセン、ピレン骨格など)に置換したものである。分子のキラル性が大きいほどgCPLの値は大きくなると予想できる。キラル性の大きさは不斉ケイ素原子に結合する各々の置換基の大きさの差に依存するため、新規化合物群はアントラセン化合物と比較し、より大きなgCPL値を示すと考えられる。ここでもπ共役置換基をはじめとするケイ素上の置換基を変化させることで構造と円偏光発光特性の相関を調査する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に一部の目的とする化合物を光学的に純粋(100%ee)にすることが非常に困難であることがわかった。最終的にはキラルカラムを用いて分離することができた。平成28年4月より本化合物の円偏光発光特性の調査を行っているところである。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成27年度までに合成はほぼ完了し、論文投稿までいくつかの円偏光発光特性を調査する必要性がある。円偏光発光特性は他大学(奈良先端科学技術大学院大学または富山大学)に測定依頼する。ディスカッションや論文作成の議論ための旅費として使用する。合わせて、論文作成のための校正代金、別刷代金にも使用する。
|