嵩高いイオン液体を基板上に修飾する場合、イオン液体は基板上に密に配向して修飾されず、イオン液体間の立体障害や電荷の反発から疎らに修飾される。その結果、イオン液体間に空間が生じ、その空間へ様々な外来性分子を導入することが可能となる。我々はこれまでに上記の技術を用いて電極上に修飾されたイオン液体間に様々な機能性分子を導入し、センサー材料や触媒能を有する機能性電極を作製することに成功している。本研究では、この技術をナノ細孔材料やナノ微粒子表面へ応用することで、主に触媒能を有する新しい機能性材料の開発を目的としている。 平成29年度は、イオン液体が修飾されたFSM細孔内部へ機能性金属錯体を導入し、均一溶液中とその機能性について比較・検討を行った。まずはじめにNO分子と選択的に反応するCo錯体を導入し、そのNO分子との反応性について検討したところ、均一溶液中と同様、FSM細孔内においてもNO分子と選択的に反応していることが判明した。またCu錯体を利用した酸化反応では、イオン液体修飾FSM細孔内にCu錯体を固定化し、基質と酸化剤を用いて反応させたところ、FSM細孔内においても基質の酸化反応が振興することガ明らかとなった。FSM内に固定化されたCu錯体では、触媒反応後にFSM材料を回収・洗浄後、再び触媒反応に利用できることが確認された。 続いて、イオン液体のアルキル鎖長の制御により電極上の空間の大きさを変化させ、そこに固定化されたフェロセンに及ぼす影響を検討した。アルキル鎖長の異なるイオン液体を電極上に修飾し、イオン液体の電極上での配向および空間に固定されたフェロセンの酸化還元挙動を赤外吸収スペクトルおよび電気化学測定により評価した。その結果、アルキル鎖長の長いイオン液体を修飾した電極では、イオン液体部位が電極上に倒れ込み、固定されたフェロセンの酸化還元挙動に影響を及ぼすことが判明した。
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