研究課題/領域番号 |
15K05607
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
佐藤 徹 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70303865)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 有機EL / 発光分子 / 振電相互作用 / 振電相互作用密度 / 輻射遷移 / 無輻射遷移 / 熱活性型遅延蛍光 / 分子設計 |
研究実績の概要 |
最近、新たな有機EL素子(OLED)の発光機構として熱活性型遅延蛍光(TADF)が注目されている。電流励起の場合、スピン統計により電荷再結合の際に発光層において25%が一重項励起子に75%が三重項励起子となると考えられている。第一世代OLEDでは一重項励起子からの蛍光が利用され、第二世代では三重項励起子からの利用が検討されてきた。TADF分子においては、最低一重項励起状態S1と最低三重項励起状態T1のエネルギー差を分子設計により小さくすることにより、T1からS1への逆系間交差を利用することで電荷再結合により生成したS1とT1の両方を利用できる。安達らは、HOMOとLUMOの重なりを低減したドナー・アクセプター(DA)型分子を用いて、多数の高い外部量子効率を示すOLEDを報告している。 しかし、S1とT1のエネルギー差が小さくないにもかかわらずTADFに匹敵する外部量子効率を示す素子がいくつか報告されている。PuらはDA型ではないビスアントラセン誘導体において、非常に高い外部量子効率を報告している。また、Yaoらフェノチアジン-ベンゾジチアゾール連結系においてTADF機構では説明のできない外部量子効率を報告している。 平成27年度は、これらのOLEDにおいて高次三重項状態Tnを経由する逆系間交差が発光に寄与していることを示し、この新規な発光機構にもとずく発光分子の設計指針を提案した。この機構においてTnより下の三重項状態への輻射/無輻射遷移が抑制されていることが本質的である。このような励起電子構造を実現する設計指針として電子状態の擬縮退を利用することを提案した。このような解析には、研究代表者が提案している振電相互作用密度を用いた。 DA型分子では発光スペクトルが幅広になる蛍光があるが、本機構ではDA型に限らないため、色純度の高い発光分子の設計が可能であると期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点でC60におけるTADF機構の解明は遅れているが、平成27年度は別の系での高い外部量子効率の解明に成功した。C60においては、状況は複雑であるが同様の機構でTADFが発現していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
解明した機構に基づく新規分子の理論設計を行い、素子作成・測定を行い設計指針の有効性を検証する。また、C60におけるTADF発現機構の解明を引き続き行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
大規模計算が必要となるC60の解析を延期したため、平成27年度は現有計算機で研究を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は大規模計算が必要となるため、計算資源の確保のためこの次年度使用額を合わせて使用する予定である。
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