研究課題/領域番号 |
15K05608
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
足立 馨 京都工芸繊維大学, その他部局等, 助教 (40401533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | アニオン重合 / ハイブリッド / コア-シェル / グラフト / ポリイソプレン / リチオ化 |
研究実績の概要 |
近年、ハイブリッド材料やコンポジットなどの複合材料を始めとする数多くの多層材料において、物質の表面および界面が、全体の材料特性に極めて重要な役割を担っていることが明らかになり非常に注目を集めている。我々はこれまでに、高分子鎖中のトリル基を選択的にリチオ化することで、リビングアニオン重合の多官能性開始剤に変換し、続くモノマーの重合により、Graft-fromアニオン重合法による多分岐高分子を得る新しい特殊構造高分子の合成法の開発に成功している。そこで本研究では、この手法を金属酸化物および金属ナノ粒子表面に展開し、微粒子表面からの表面開始リビングアニオン重合による、コア-シェル型ハイブリッド微粒子の合成法を確立することを目的とした。また得られたハイブリッド微粒子を用いた高機能複合材料の開拓を行うことを目的とした。平成27年度は計画に基づき、無機微粒子表面にアニオン重合の開始点を導入し、そこから各種モノマーを重合するGraft-from法を用いて、無機微粒子表面に対応する高分子を高密度で導入する、新しい表面修飾法について詳細に研究を行った。無機微粒子としてシリカ微粒子を用い、表面上のシラノール基にp-トリルトリメトキシシランを用いてトリル基を導入し、トリル基からのアニオン重合を行ったところ、シリカ微粒子表面よりアニオン重合が進行することがわかった。しかし、得られた高分子の分子量分布が比較的広いことから、成長末端アニオンのシリカ表面への攻撃などの副反応が示唆された。得られた微粒子のTEM像よりコア-シェル型のハイブリッド微粒子が得られたことが明らかになった。比較として、末端にトリエトキシシリル基を有するポリイソプレンをGraft-Onto法によりシリカ微粒子にグラフトしたところ、Graft-from法による表面修飾の方が遙かに高密度で高分子鎖がグラフトしていることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実際の研究に携わっていた学生が、約半年間海外留学したため、研究にやや遅れが発生している。平成27年度には、無機微粒子としてシリカ微粒子および金属ナノ粒子を用いて、それらの表面へのトリル基の導入と、そのリチオ化、続く各種モノマーのアニオン重合を計画していたが、実際はシリカ微粒子を用いた表面修飾のみにとどまり、金属ナノ粒子の表面修飾については現状のところ取り組めていない。しかしシリカ微粒子を用いたコア-シェルハイブリッド微粒子については、平成28年度以降に予定していた複合材料の開発に既に着手しており、予定より進んでいることから、総合的に判断すると若干の遅れが生じていると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度以降は当初の計画通り、コア-シェル型ハイブリッド微粒子を用いた高機能複合材料の開発として、ポリイソプレンをグラフトしたハイブリッド微粒子を反応性フィラーに用いた複合材料の開発および金属ナノ粒子をコアに有するハイブリッド微粒子を用いた金属ナノ粒子の集積について取り組む予定である。シリカ微粒子を用いたハイブリッド微粒子については、既に複合材料の開発に着手しており、このままの研究体制を維持する。金属ナノ粒子を用いたハイブリッド微粒子については、新しく学生をつけることにより、研究のスピードアップを図る。これにより、計画からやや遅れが生じている研究を、当初の予定通りに進行させることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に、小型卓上試験器の購入と10月頃の納入を計画していたが、実験担当学生が9月から半年の海外留学を行ったため、小型卓上試験器の購入を平成28年度に延期した。また必要な誌薬類に関しては、研究室在庫ならびに企業からのサンプル提供により賄うことができたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初平成27年度購入予定の小型卓上試験器を平成28年度に購入する予定である。それ以外にも主に、実験計画で遅れが生じている金属ナノ粒子を用いたハイブリッド微粒子に関する消耗品類を重点的に購入する予定である。
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