ハイブリッド材料やコンポジットなどの複合材料を始めとする数多くの多層材料では、物質同士が構築する界面が、材料全体の特性に極めて重要な役割を担っている。そこで本研究では、Graft-fromアニオン重合法による表面開始重合により、コア-シェル型ハイブリッド微粒子の合成法と、得られたハイブリッド微粒子を用いた高機能複合材料の開拓を行った。平成29年度には、無機微粒子としてシリカに加えてカーボンナノチューブ(CNT)を用い、CNT表面からの表面開始アニオン重合を用いたポリイソプレン-CNTハイブリッド微粒子を作成した他、これに水素添加することでポリオレフィン-CNTハイブリッド微粒子を作成した。これらの共有結合型のハイブリッド微粒子に加え、ピレニル基を有する高分子を用いた相互作用型のハイブリッド微粒子を作成した。得られたハイブリッド微粒子をポリイソプレンおよびポリオレフィンと複合化させてコンポジットを作成し、その特性を調べたところ、共有結合型のハイブリッド微粒子を添加したコンポジットは、相互作用型のハイブリッド微粒子を添加したコンポジットと比較して、弾性率、伸張応力、破断伸びおよび引張強度のいずれについても高い値を示した。これは微粒子とグラフトしている高分子が共有結合で強く結合していることにより、フィラーとしての微粒子の特性が効果的に表れたためだと考えられる。また、Graft-fromアニオン重合による高分子/金属ナノ粒子については、トリル基を表面に有する金ナノ粒子のリチオ化と続くエチレンオキシドのアニオン重合により、親水性の金ナノ粒子の合成に成功した。この結果から、金ナノ粒子表面からのGraft-fromアニオン重合によりポリエチレンオキシドと金ナノ粒子のハイブリッド微粒子が得られたことが明らかになった。
|