近赤外領域の光に応答する半導体は、近赤外領域の光を用いた診断器具や生体認証センサーなどの受光体として非常に重要であるが、化合物半導体がほとんどで、軽量でプリンタブルな有機半導体に関する研究はほとんどない。本研究では、高感度でプリンタブルな近赤外有機フォトトランジスタの作製を目的として、ドナー分子とアクセプター分子からなる低次元ナノ結晶の合成を行った。合成したナノ結晶は、ドナーとアクセプター間の相互作用により、長波長側に新たにCT吸収帯を有することを明らかにした。アクセプター分子として、フラーレン類を用いることで、このCT吸収帯を近赤外領域に有するナノ結晶の合成が可能になった。 本年度は、より長波長までの光を吸収することが可能なC70をフラーレンとして用いて、ポルフィリンとの共結晶化を検討し、新規なC70フラーレン/ポルフィリンの低次元D-Aナノ結晶の合成に成功した。合成した低次元D-Aナノ結晶は、C60を用いた場合よりも長波長側にCT吸収帯を有することを明らかにした。また本ナノ結晶の結晶構造は、単結晶X線結晶構造解析により明らかにした。 また、これまでに合成した低次元D-Aナノ結晶を用いて電界効果トランジスタを作製し、紫外から近赤外までの種々の波長を有する光源を用いて、光応答性についての検討も行い、これらの低次元D-Aナノ結晶が光応答性を有することを明らかにすることができた。 これらの低次元D-Aナノ結晶の1本づつを用いてのデバイス作成についても併せて検討を行った。
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