研究課題/領域番号 |
15K05616
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
秋山 陽久 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (80356352)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 可逆接着 / アントラセン / 光二量化 / 熱解離 |
研究実績の概要 |
室温での安定状態が液体である場合と固体である場合を可逆的に制御できる無色の化合物群を合成し、その特性を明らかにすることを目的としている。対象となる分子の基本構造は、光二量化反応を示すアントラセンユニットを一分子中に複数もつ糖アルコール誘導体である。すでにアントラセンの6量体構造で液状化合物の合成に成功し、この化合物が、光二量化反応による架橋体の生成と熱解離反応によって繰り返し液体状態と固体状態をとることがわかっている。これらの化合物は、ニートでは液体時の粘性が高く取り扱いが難しかったが、本年度分子構造を調整することによって、繰り返し液化する性能を保ったまま液体時の粘性を引き下げることに成功した。具体的には置換基数を変えている。これに付随して合成時の収率も大幅に改善されている。このためこれまで収量が低く困難であった光硬化したバルク樹脂の力学特性の検討が可能となった。現在その特性を検討中である。また、当初、硬化時に不可逆光反応物が生成してしまうために戻りの液化特性に問題があったが、光照射波長を厳密に制御することで副反応を抑えられることがわかり、これによって繰り返し特性を向上させることに成功している。この液化に必要な熱分解反応の反応温度が分子構造で異なることが分っていることから、各化合物について、分解反応の温度依存性を詳細に調べた。その結果、多段階で分解反応がおきていることが明らかとなり、複数の異性体がこの反応に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
関連特許の国外移行手続きをおこなっているため、このタイミングで限定したデータで国際学会発表を行った。また論文投稿も始めているところである。2016年度は、低粘度化に成功するなど研究の当初の目的は達成出来ていることに加え、メカニズムの解明に向けた新しい成果を得ることができている。一方で2015年立ち上げた接着ラボが母体となって2016年12月に接着コンソーシアムを産総研で立ち上げた。この追加的な業務が発生しため、成果発信にやや遅れがでている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年は、成果発信を加速させる。国内外の学会発表等を積極的に行うとともに論文の投稿を行う予定である。最終年の研究課題としては、バルクの硬化樹脂の粘弾性や機械的強度特性評価を行うことで、分子構造と相関を検討する。また液化については、分解反応の反応温度と分子構造の相関について判明してきているので、この知見を利用してより簡便に液化できる手法を実証して、予想されるメカニズムが確かであることを確認したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今期は2年度目であり、初年度接着ラボの立ち上げなどで、遅れが出た分を取り戻すために、研究員を雇用して研究を進めた。そのおかげで、研究成果を得ることが出来たが、本年度コンソーシアム設立という当初想定していなかった業務が発生したため、学会発表や論文発表等の成果発信に遅れがでている。そのため未執行分が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
これまで遅れていた、国内外での学会等での発表を行う予定である。国際発表は最低2件を予定しており、これらの旅費と学会参加費に充当する。
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