硫酸化糖鎖の抗ウイルス作用や抗凝血作用などの特異な生理活性は、ウイルスや細胞表面に存在するタンパク質中の(+)電荷と硫酸基の(-)電荷との静電的相互作用によると推定されている。これまでに表皮タンパク質のモデル化合物としてポリリジンを用い表面プラズモン共鳴装置(SPR)等によって調べてきた。 平成29年度は硫酸化糖鎖とペプチドとの相互作用を測定し、期間全体を通して硫酸化糖鎖の抗ウイルス性などの生理活性作用メカニズムを定量的に解明することを目的に研究した。HIVの表皮タンパク質gp120の(+)電荷集中部位などいくつかの領域中の約20アミノ酸配列についてペプチド合成機器によって合成し、カードラン硫酸やデキストラン硫酸など構造明確な硫酸化糖鎖との相互作用をSPRによって定量的に調べた。 その結果、硫酸化糖鎖とリジンやアルギニンなどを持つペプチドとは強い相互作用を示し硫酸化糖鎖の抗ウイルス作用は(-)電荷を持つ硫酸基と(+)電荷を持つ表皮タンパク質との静電的相互作用が重要が役割を担っていると考えた。
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