研究課題/領域番号 |
15K05620
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
斎藤 拓 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90196006)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 二酸化炭素 / クレイズ / 配向 / 力学特性 / ポリカーボネート / ミクロ相分離構造 / ポリウレタン |
研究実績の概要 |
本研究は、高圧二酸化炭素下でブロック共重合体などを熱延伸して、二酸化炭素による界面張力の低下や選択的な含浸を利用してそのミクロ相分離構造などの高次構造を制御したり、その変形挙動の詳細を明らかにすることを目的にしている。 光学用途材料に利用されている低分子量ポリカーボネートを高温下あるいは高圧二酸化炭素下で延伸すると、二酸化炭素圧力の増加あるいは温度の増加に伴い延性から脆性へと変化することがわかった。二酸化炭素圧力の増加と温度の増加に伴う力学特性の変化に大きな違いは見られなかった。ところが、高温下では楕円形のクレイズ構造が形成されるのに対して、高圧二酸化炭素下では延伸方向に対して垂直方向に繊維状に細長く、周期的に配列したクレイズ構造が形成されること、つまりは高圧二酸化炭素下では大気圧下では得られないクレイズ構造が形成されることが見出された。高圧二酸化炭素下における繊維状クレイズ構造の形成過程の可視化観察の結果から、細長いクレイズは繊維方向にゆっくりと成長するのではなく、速い速度で成長し、細長いクレイズが延伸に伴い数を増やしながら周期的に密に配列していくことが明らかになった。このような高圧二酸化炭素下における特異な繊維状クレイズ構造の形成は二酸化炭素下での表面張力の低下や分子鎖の絡み合いの低下によると考えられる。 ミクロ相分離構造を形成する熱可塑性ポリウレタンを特定の温度で溶融結晶化させると球晶が形成されることが見出された。この熱可塑性ポリウレタンを高圧二酸化炭素下で溶融してミクロ相分離構造の秩序性の度合いを制御させてから溶融結晶化させることで、ポリウレタンの球晶や結晶高次構造の制御を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリカーボネートを高圧二酸化炭素下で延伸することで、大気圧下では得られない細長い特異な形状をしたクレイズが形成されることが見出され、その可視化観察の結果から特異なクレイズの形成過程を明らかにできたことから、研究は順調に進展していると考えられる。また、ミクロ相分離構造を形成する熱可塑性ポリウレタンで球晶構造の形成を見出すことができたことから、高圧二酸化炭素下によるミクロ相分離構造の制御の研究を発展させることが可能になっている。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロ相分離構造を形成する熱可塑性ポリウレタンにおいて球晶構造が形成されることを見出すことができたことから、高圧二酸化炭素下の種々の温度・圧力でポリウレタンを溶融してミクロ相分離構造の秩序性を制御させてから、冷却・等温結晶化させることで得られる球晶や球晶高次構造の特徴について偏光顕微鏡や小角X線散乱測定の結果に基づいて明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに執行することができたが、消耗品の購入を効率的に行った結果、わずかばかり余剰金が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の研究予定に沿って物品の購入に充てる予定である。
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