最終年度は、感熱応答ゲル微粒子の粒子径/弾性率モニタリングシステムの確立を目指した。まず試料として、微粒子の合成においてエマルション内部からラジカル開始材を供給する実験や、外部から供給する実験を試みた。これにより様々な構造(内部構造が均一な感熱応答ゲル微粒子や、内部が多孔質な相分離ゲル微粒子)のゲル微粒子を得ることができた。その一方で、粒子内部で二次相分離が生じたためカプセル状の試料を得ることは困難であった。それゆえ、超音波散乱の研究は様々な構造のゲル微粒子について行った。超音波減衰率と音速の周波数依存性を調べ、散乱関数モデルを用いて定量的な解析を行った。得られた結果は、別途行った密度測定や光学顕微鏡測定の結果と比較した。その結果、超音波解析がゲル微粒子懸濁液の解析に非常に有効な手法であることがわかった。ドラッグデリバリーシステムにおける薬剤放出では、サイズ変化に加えて、放出時の粒子の硬さも重要な情報となると考えられるので、これらの同時モニタリングが可能になったことが大きな成果の一つである。また、超音波測定の興味深い点は、圧縮弾性率のみならず、粒子のずり弾性率という2種類の弾性率情報を得ることができる点である。ずり弾性率は圧縮弾性率と比較して何桁も小さいので、対応する横波音速は、縦波音速と比較して非常に小さい。それゆえ、ゲルの横波音速測定は非常に困難であると考えられてきたが、超音波の力学的な共鳴現象に着目した微粒子の散乱解析により、これらを定量的に得ることができた。この間、超音波散乱法のファインバブルへの応用、超音波散乱法の食品科学への応用、超音波散乱法の微粒子懸濁液の基礎理論解析も併せて行い、様々な超音波散乱法による微粒子研究を展開することができた。
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