研究課題/領域番号 |
15K05635
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
永 直文 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (40314538)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲル |
研究実績の概要 |
本研究では、可逆的に解離-結合が起こるリンカー分子を用い、特定の条件下でネットワークが解放される開閉型ジョイント-リンカーネットワークミクロゲルの合成を検討する。さらには、ネットワークのナノ空間に触媒や反応性分子を内包し、ネットワーク開放時にのみゲル中やゲルの近傍で反応が進行するスイッチング反応への応用を検討する。 平成27年度はリンカー分子に可逆結合を有するジョイント-リンカーネットワークミクロゲルの合成を検討した。可逆結合としては、温度による開裂-再結合するディールス・アルダー反応、光照射による可逆的2量化反応を進行するケイ皮酸やアントラセン化合物、酸化還元により開裂-再結合するジスルフィドの導入を検討した。ジョイント分子とリンカー分子との反応には、これまでのゲルの合成で検討してきたチオール‐エンクリック反応を用いた。リンカー分子にジスルフィド結合を有する化合物を用いた系ではゲルが得られ、走査型顕微光散乱によるゲルの網目サイズ、網目サイズ分布の測定を行った。同ゲルについて圧縮試験により力学的特性解析を行い、ヤング率、破断点、破断強度を評価した。さらに、ジスルフィド結合の還元によるネットワークの開裂(ゾル化)と、酸化反応による再結合(再ゲル化)を確認した。同ゲルのミクロゲル化、およびディールス・アルダー反応や光二量化反応を用いたゲルの合成については、検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討予定のゲルの一つについては、平成27年度中に平成28年度に予定していた力学的特性解析まで完了しており、計画より進んでいるものの、ミクロゲル化や他の方法でのゲルの合成については、現在進行中であり、若干計画より遅れている。理由としては、実験条件の設定に予想以上の時間がかかったことと、研究室内での担当学生間の引継ぎがスムーズに行われなかったことが挙げられる。現状では新年度の人員体制で研究が進行しており、前年度の遅れは取り戻せるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ジョイント‐リンカーゲルのミクロゲル化を検討する。ミクロゲルの調製条件と粒子径、形状の相関を明らかにし、今後検討する触媒反応に適したミクロゲルの合成条件を確立する。まだ評価が完了していないゲルについて、圧縮試験、引っ張り試験を用いて力学的特性解析を行い、ゲルの構成要素(ジョイント分子,ロッド分子の構造、濃度、溶媒)、網目構造との相関について検討する。ゲルの熱的性質について、示差走査熱量計(DSC)、および示差熱天秤(TG‐DTA)を用いて、特に、ゲルの耐熱性、熱的安定性について詳細に検討する。 網目構造で形成されるナノ空間に触媒分子を内包したジョイント‐リンカーミクロゲルを合成する。内包する触媒としては、担持型触媒や固定化触媒として実績のある、遷移金属錯体触媒を用いる。これらの触媒分子が内包されたゲルについて、溶媒抽出による触媒の漏洩の有無を確認する。単純な内包では触媒の保持が不十分で触媒がゲルから漏洩する場合は、リンカー分子に錯体が配位する部位を導入する。錯体触媒以外に有機分子触媒の導入についても検討する。 触媒を内包したジョイント-リンカーミクロゲル用いた触媒反応を検討する。まず、リンカー分子の可逆結合が開裂する条件下でゲルのネットワークを開放し、この時の触媒反応速度と基質特異性について評価する。ついで、リンカー分子の可逆結合が再結合する条件下、すなわちゲルのネットワークを閉鎖した状態で同様の反応を行い、触媒反応のスイッチング特性について評価する。ネットワークの開閉挙動についても、開裂-再結合の応答速度,応答率を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度検討予定項目のいくつかについては現在進行中であり、若干計画より遅れているため、消耗品費の一部が年度内に執行されなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
現状では新年度の人員体制で前年度の遅れを取り戻すべく研究が進行している。予算については、前年度からの繰越を含めて、当初の実験計画に従って執行する予定である。
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