本研究では、これまで検討してきた架橋点となる多官能ジョイント分子と架橋点間を繋ぐリンカー分子との有機溶媒中での付加反応により合成されるジョイント‐リンカーネットワークゲルの合成と、同ゲルのミクロゲル化およびスイッチング反応への応用を検討する。平成29年度は、同ゲルへの種々の触媒成分の内包(導入)方法と、ミクロゲル化を中心に検討を行った。触媒成分の内包(導入)方法については、これまで検討してきた触媒金属が配位するユニットを有するリンカー分子を共存させる方法以外に、配位子をゲル内に分散させる方法、骨格のネットワーク構造の一部に直接担持させる方法、ネットワークを形成しているジョイント,リンカー分子の未反応部位に新たに配位するユニットを形成させる方法についても検討した。触媒成分を導入したゲルについては、モデル反応を検討し、触媒由来の化学反応の進行を確認した。また、ネットワークの開閉状態での反応の差の検討においては、ネットワークの開閉状態よりもゲル中での反応基質の拡散が律速となっていることが示唆された。ミクロゲル化については、乳化剤(界面活性剤)の存在下で、ホモジナイザーを併用することで、粒子サイズが揃ったミクロゲルの生成が可能であることが明らかになった。また、マイクロ流路を用いた調製方法についても検討し、油相を担う溶媒種の選択と、水相中の界面活性剤のHLB値(Hydrophilic-Lipophilic Balance)の最適化により、ミクロゲルの生成に有用な手法であることが分かった。
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