研究課題
光や熱に対して応答する機能性高分子材料の開発と,ヘテロ接合薄膜の作製に関する検討をおこなってきた。研究期間内に,いくつかの新しい機能性材料を発見することができた。水中で自発的にナノ粒子を形成する,ポリチオフェンを見いだした。このナノ粒子は,異なる外場刺激 (溶媒,熱,pH) に対して可逆的に色が変化する,多刺激応答クロミックナノ粒子であることがわかった。また,ナノ粒子分散液を用い,溶液プロセスでナノ粒子をフィルム化することに成功した。ナノ粒子フィルムの外場応答性を利用した,環境センサーへの応用が期待できる。ナノ粒子化するフラーレン誘導体が,単層カーボンナノチューブ (SWCNT) の水中分散剤として機能することを見いだした。n型半導体であるフラーレンナノ粒子が,パイーパイ相互作用によって SWCNT 表面に付着すると,安定な分散状態を維持することがわかった。さらに,p型半導体特性を示す水溶性ポリチオフェンをフラーレンナノ粒子/SWCNT 複合体と水中で混ぜ合わせると,ポリチオフェンーフラーレンナノ粒子界面で, pnヘテロ接合を形成した。得られたポリチオフェン/フラーレンナノ粒子/SWCNT 分散水溶液を用いて成膜したフィルムは,擬似太陽光による光電変換応答を示した。今年度は,熱によって可溶部位が脱離するポリチオフェンを合成し,溶液プロセスによる基板フリーSWCNTフィルムの作製に成功した。ポリチオフェンは,SWCNT 分散能を有しており,容易にSWCNTと複合化した分散液を得た。この分散液から溶媒をゆっくりと蒸発すると,SWCNTを成膜化できることを発見した。得られたフィルムを加熱すると,可溶部位の固相熱脱離反応が進行し,不溶性の基板フリーSWCNTフィルムとなった。フィルムの熱電変換性を検討したところ,熱電変換の指標である性能指数 (zT) は 0.03 と高い変換効率を示した。
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