研究課題/領域番号 |
15K05642
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
勝又 英之 三重大学, 工学研究科, 准教授 (10335143)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光アノード / 水素生成 / リン酸銀 / 可視光 |
研究実績の概要 |
太陽光エネルギーを利用した半導体光電極による水分解システムは、低炭素社会の実現のための理想的な水素製造技術である。リン酸銀光触媒は、540 nm付近までの可視光を吸収できるため、効率的な太陽光利用が期待できる。しかし、リン酸銀は光触媒反応中に金属銀への自己還元が起き、安定性に乏しい。そこで本研究では、ナノ構造が制御されたリン酸銀結晶を銀基板表面上に直接成長させた後、イオン交換法により臭化銀が担持された光アノード電極の調製を行うことで、安定性の向上を目指した。本年度は、昨年度行った薄膜作成の最適化を受けて、水素生成系の設計を行った。はじめにローダミンBの脱色により薄膜の光触媒活性を評価した。薄膜作成時のPVP濃度が増加するにつれ、その光触媒活性は向上した。最も高活性な薄膜では、4時間の光照射で99%以上のローダミンBの脱色に成功した。また、リン酸銀薄膜が存在しない場合においては、ローダミンBの脱色は観察されなかった。このことより、ローダミンBの脱色は、リン酸銀の光触媒作用によるものであることが判明した。また、PVP濃度による光触媒活性依存は、その濃度によりリン酸銀微結晶の形態が変化していることから、リン酸銀のナノ構造が大きく関与していると考えられる。リン酸銀薄膜のフォトルミネッセンススペクトルを測定したところ、PVPを用いて調製したリン酸銀薄膜のPL強度は、用いずに調製した場合より低く、光電荷キャリアの再結合を抑制出来ていることが判明した。次にリニアスイープボルタンメトリーを行ったところ、光電極に可視光照射時には光電流が流れ始め、電圧が貴側になるにつれ光電流値の上昇が認められた。それとともに、対極の白金からは水素の生成が観察された。一方、可視光非照射時にはいずれの電圧においても、電流は流れなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度作成した薄膜の光触媒活性をローダミンBの脱色により評価し、また光電極としての応用を試みた。その結果、一定の成果が得られた。したがって、概ね予定通り進行していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は合成できた薄膜を用いて、光アノード電極としての可能性を見出した。次年度は、さらに詳細に可視光照射下における水分解からの水素生成法の条件を検討し、系の最適化を確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
備品購入額が、予定より若干低く購入できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額が少額のため、消耗品等の購入に充てる。
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