研究実績の概要 |
リチウムイオン電池(LIB)は高いエネルギー密度、充放電速度から、小型から大型に及ぶまで様々な用途に利用されている。LIBの更なる高機能化には、内部抵抗の低減による高エネルギー密度と高速充放電の両立が求められる。この背景のもと、近年ナノ構造中でのイオン輸送に関する報告がなされている。しかしイオン輸送の研究分野においては、ナノ構造体の固体表面の影響に関する知見はほとんどない。そこで本研究ではナノ構造体として規則的な構造を有する陽極酸化アルミナ(AAO)に着目した。また従来困難であったLPD法によるAAOへの金属酸化物薄膜修飾法の確立を試みた。作製した金属酸化物修飾AAOを用いることで細孔内のイオン輸送抵抗への固体表面の影響を調べた。 10 mmol L-1 (NH4)2SiF6 H2O/EtOH溶液中にAAO基板を浸漬し、-14 °Cで10 h反応させることでSiO2修飾AAOを調製した。作製したAAO膜を用いて四極セルによる交流インピーダンス測定を行った。Fig.12に示した各試料でのナイキストプロットからイオン輸送抵抗による半円が確認された。イオン輸送抵抗から細孔内での比イオン電導度を算出した。TiO2修飾AAOではAAO膜中でのイオン電導度の3倍の伝導度を示し、SiO2修飾AAOではAAO膜でのイオン電導度と同程度の伝導度を示した。いずれの試料においても、バルク溶液の伝導度に対する膜中での伝導度の比が溶液濃度の変化に関わらず一定であった。AAO、SiO2修飾AAO、TiO2修飾AAOのイオン電導度の活性化エネルギーはそれぞれ14.6 kJ/mol, 13.8 kJ/mol, 13.2 kJ/molであった。この結果から、細孔内でのイオン電導度は金属酸化物の表面電位に影響されることが示唆された。
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