研究課題/領域番号 |
15K05647
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
森賀 俊広 徳島大学, 大学院理工学研究部, 教授 (90239640)
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研究分担者 |
村井 啓一郎 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (60335784)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 酸窒化物 / ペロブスカイト / 層状構造 / 非化学量論 / 蛍光体 |
研究実績の概要 |
ペロブスカイト関連K2NiF4型構造を有するSr2TaO3Nは、岩塩型SrO層とペロブスカイト型SrTaO2N層が交互に積み重なった層状構造を取り、可視光応答光触媒や誘電体、赤色顔料としての応用が期待されている。これまでこのSr2TaO3Nの合成には、原料酸化物の300時間以上の長時間の窒化が必要と言われてきた。しかしながら、平成27年度に、酸化物前駆体としてSr6Ta2O10を利用することにより、1000℃、48時間のアンモニアによる窒化により単一相を合成できることを見出した。 平成28年度には、この層状Sr2TaO3NがペロブスカイトSrTaO2Nよりもより赤い色を呈する原因について構造化学的見地から明らかにした。X線リートベルト解析より、Sr2TaO3N中の(O,N)-Ta-(O,N)結合角は180°であるのに対し、SrTaO2Nでは約10°程度小さくなっており、Taとアニオンの軌道の重なりがSr2TaO2Nの方が強いことが示唆された。即ち、Sr2TaO3Nでは共有結合性がより優勢になることによりバンドギャップの狭窄が生じ、結果としてより赤い色を呈することが考えられた。Ta(O,N)6八面体中のTa-(O,N)結合距離もSr2TaO3Nの方がSrTaO2Nに比べ0.1A程度長くなっており、イオン結合性よりも共有結合性がより有意な状況にあることが示唆された。 また、これまで赤色を呈するSr2Si5N8:Eu窒化物蛍光体は窒素加圧雰囲気下、1600℃以上の高温での焼成合成が必要とされてきた。また、原料も安定なSrの炭酸塩などは使用できず、吸湿分解性の高いSr3N2を用いる必要があった。 平成28年度には、グラファイトボートを用いることにより、5%水素95%窒素混合ガス気流中1300℃焼成にてSrCO3を原料に用いたSr2Si5N8:Eu蛍光体の単一相の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の懸案事項であった層状Sr2TaO3NがSrTaO2Nペロブスカイトよりもより赤色を呈する原因を構造化学的見地から明らかにすることができたとともに、赤色窒化物蛍光体として注目されているSr2Si5N8のより経済的(より安価で安定な出発原料、低い焼成温度、より簡便な合成雰囲気)な合成方法を見出すことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
層状Sr2TaO3Nに関しては、平成27年度に合成条件を確立させることが、平成28年度にはその構造上の特徴が明らかになった。平成29年度については、物性面、即ち可視光応答光触媒性能や誘電体としての性能をより向上させる合成条件および適切な添加・置換元素について明らかにしていきたい。 (酸)窒化物蛍光体に関しては、化学量論組成にとらわれることなく、またこれまでの合成方法にとらわれることなくより(Ba,Sr)3Si6O12N2:Eu黄色蛍光体およびSr2Si5N8赤色の簡便で経済的な合成法を確立することができた。Sr2Si5N8については、新しく発見した合成法を適用すると、これまでの報告よりも20-30nm発光波長がブルーシフトしているので、この原因について明らかにするとともに、演色性の向上や温度特性の向上など既存の白色LED用蛍光体の問題点を解決できる黄色・赤色蛍光体を提案できるよう研究を進めたい。
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