研究課題
次世代燃料電池電解質として期待されるランタンシリケート(LSO, La9.33+xSi6O26+1.5x)のイオン伝導特性を評価し、粒界構造との相関解明を行った。x = 0.67とし、Siサイトの一部をAlまたはFeで置換固溶したLa10(Si6-yMy)O27-0.5y(M: Al or Fe)の粒内および粒界抵抗を交流インピーダンス法によって分離評価したところ、焼成温度を1700℃、y = 0.2~0.5とすることでLSOの粒内抵抗を大幅に低減でき、イオン伝導度が向上することが分かった。これは置換固溶および高温焼成によってLSOにおけるLaの固溶範囲が広がり、電荷補償としてキャリアとなる格子間酸素がより多量に導入されたためと考えられる。また、M = Feとすることで、M = Alよりも粒界抵抗を大幅に低減でき、さらに化学的安定性が劇的に向上することが分かった。一方、放射光マイクロビームを用いた微細構造観察手法を確立した。具体的には大型放射光施設SPring-8、BL24XU兵庫県ビームラインにおいて、ゾーンプレートを用いてμmサイズに集光したX線を用い、透過X線回折(XRD)測定により薄片化したLSO試料の詳細な相関係評価が可能となった。この手法で観察したところ、M = Alにおいて化学的に不安定なLa2O3相が粒界に生成するのに対し、M = Feでは新たな複合化合物が粒界に生成することが分かった。それにより粒界が安定化し、粒界抵抗が低減した可能性が高いことが示された。さらに最終年度には、LSOの粉砕粉末に対するXRD二次元マッピングと試料ステージのω軸を回転したXRD測定手法を確立し、粒子表面の微量第二相をより確実に迅速に検出することが可能となった。以上の伝導挙動と粒界構造の評価手法を活用することで、好ましい粒界構造をもつLSOの作製条件の最適化が可能となった。
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Solid State Ionics
巻: 319 ページ: 223~227
10.1016/j.ssi.2018.02.002