研究課題/領域番号 |
15K05652
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
後藤 琢也 同志社大学, 理工学部, 教授 (60296754)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 核生成 / 結晶核制御 / 溶融塩電解 |
研究実績の概要 |
筆者らは、溶融塩に比較的容易に酸化シリコンが溶解する特性を生かして、溶融塩中に溶解した酸化シリコンを出発物質とする電解によるシリコンおよびシリサイドの合成を行っている。一方、シリコンやシリサイドの機能を発現させるためには、その、結晶構造や形態を制御しながら形成することが重要となる。これには、電解による形成機構を明らかにする必要があるが、現時点でその形成機構とは、不明である。 そこで、溶融塩中における酸化シリコンからのシリコンの電気化学合成について、各種金属基板を用いて、その形成過程について得られたミクロ組成および物性を定量的に分析・評価することで、電解条件が結晶生成・成長プロセスの素過程に及ぼす影響について検討した。特に、今年度は、BaCl2-CaCl2-NaClと比較してSiO2の溶解度の向上が期待できるBaCl2-CaCl2を選択し、電解条件と得られた形成物の組成、形態の関係について特に検討した。浴中へのSiO2の溶解を確認するために、作用極にAgを用いて電気化学挙動を調査し、電解電位を-1.40 V、-1.50 V、-1.60 V、-1.70 Vと決定し、1時間の定電位電解により試料を作製した。-1.60 Vで電解したAg板試料のSEM画像より、Ag板上に粒状の析出物を確認し、EDSで分析した結果とXRD分析により、析出物はSiであった。同様に、Fe板試料を用いて、-1.40 V、-1.60 V、-1.80 Vで1時間の定電位電解を行った。-1.60Vで1時間電解したFe板試料はSEM画像より針状の析出物を確認した。XRDの分析により、Fe-Siの形成を確認した。シリコン薄膜の析出形態が基板元素の影響を受けた理由としては、基板元素により、シリコンの臨界核密度が変化することが影響していることが電気化学測定から明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には、溶融塩中におけるシリカからのシリコンの電気化学的合成について、電解条件(電位、電解時間)を系統的に変化させながらFe基板上で電解を行い、その際の電位・電流の応答と、得られた結晶のミクロ組織および物性を定量的に分析・評価することで、電解条件が結晶生成・成長プロセスの素過程に及ぼす影響を検討できたため、おおむね順調に進呈していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、電極表面の形態が、析出シリコンのミクロ組織に対してどのように影響を与えるかについて、当初の予定通り、以下の①から③を実施する。 ①溶融LiCl-KCl中での基板のアノード溶解 ②電解による水素前処理 ③アルカリ金属による前処理 以上、3つの方法で前処理を行った基板(アルミニウム、鉄、銀、銅、ステンレス)それぞれについて、シリコン形成のための電解を行い、電解条件と核生成密度と前処理の関係について検討し、最適な前処理の条件を明らかにする。
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