シリコンは地殻中にSiO2などとして豊富に存在し、化学的に安定であり、半導体特性をもつ。このことから、太陽電池や電子機器などに広く利用されている。近年シリコン消費量が増加しており、様々な製造方法による大量・安定供給が求められている。 シリコンの新規製造方法の一つとして、溶融塩電解法が注目されている。溶融塩電解法は広い電気化学窓を持ち、電気化学パラメータの変化によって電析物の結晶性などを制御できることを特徴とした方法である。我々は、SiO2粉末を含む600℃の溶融LiF-NaF-KF中における、Ag基板上の結晶性Siの電析を報告している1)。この系において、電析したSiの形態や結晶性、組成などといった特性をより容易に制御するためには電析機構を理解することが重要である。しかしながら、電解条件が電析物の形態などに与える影響は未だ明らかではない。ここでの電解条件とは、例えば電解電位や電解浴の組成や温度、電極基板の種類や、溶融塩中のSiO2の粒径や化学状態・物理状態などである。 本研究では電解条件の内、溶融LiF-NaF-KF中のSiO2の粒径と電析したSiの形態の関係に焦点を当て、調査を行った。 具体的には、粒径が約9.1μmから5nmのSiO2粒子から電析させたSiのXRD分析とラマン分光分析を行った。いずれの電解においても、シリコンが電解析出することを明かにした。更に、SiO2粒子径が小さいほど、平滑なシリコン膜が得れらた。このことから、SiO2の溶解様式および還元様式がSiO2の粒子径と相関があることを明らかにした。
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