研究課題
本年度は、層状ニオブ酸塩K4Nb6O17ナノシートの表面に存在するNb-OH基を起点としたssDNAの修飾方法の確立を目指して研究を進めた。まずは、官能基末端ssDNA鎖のナノシート表面へのグラフト反応による修飾を試みた結果、六ニオブ酸ナノシート表面に、蛍光標識付きのssDNAを修飾することに成功した。六ニオブ酸塩ナノシートを凍結乾燥してスポンジ状とし、APTMS(アミノプロピルトリメトキシシラン)、無水コハク、アミノ基末端の蛍光標識(FITC)付きssDNAと、順次、反応を行う事で、試料を得た。得られた試料を共焦点レーザー顕微鏡によって観察すると、10 μm程度の平板状のナノシートが明瞭に観察された。反応前の試料、または単にアミノ基末端の蛍光標識ssDNAとナノシートを混合しただけの試料では、蛍光像は観察されなかった。さらに、赤外吸収スペクトルでも、合成を確認するようなデータが得られている。これらの結果から、蛍光標識付きのssDNAをナノシート表面に修飾できたものと考えられた。当初の予定通り、ssDNA修飾ナノシートが得られたため、H28年度以降では、コロイド系のロジック応答に取りかかることが可能となり、意義のある成果が得られたと言える。一方、ホスファイト法によるナノシート表面でのDNA直接合成に向けた準備も進めた。凍結乾燥したスポンジ状のナノシート試料を用いて直接の反応を試みたが、反応の進行は確認されなかった。ナノシート表面のNb-OH基の反応性が低いためと考えられたので、現在、表面に反応性が比較的高いと思われるアルコール性OHの導入を試みている。
2: おおむね順調に進展している
官能基末端ssDNAを用いた検討では、当初の計画通り、DNA修飾ナノシートを得ることに成功しており、概ね順調に進展していると考えている。
前年度の検討で確立した手法を用いて、種々の塩基配列のssDNAを修飾したナノシート試料を合成し、①コロイド系のロジック応答の検討および、②ヘテロ積層構築の検討を進めていく予定である。一方、ホスファイト法によるssDNA修飾ナノシート合成は未だ達成されていないので、引き続き検討を行う。
研究の進展状況を鑑み、次年度以降により多くの予算が必要になることが想定されてきたので、今年度支出を予定していた旅費や消耗品類購の費用の多くを、他の予算から支出した。そのため、次年度使用額が生じた。
研究が進展してきたので、合成DNAなどの高価な試薬類や、協力研究者の研究室を訪問し実験するための費用などとして、予算を使用する予定である。
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