研究課題/領域番号 |
15K05660
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
中村 一希 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 准教授 (00554320)
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研究分担者 |
小林 範久 千葉大学, 大学院融合科学研究科, 教授 (50195799)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ユーロピウム錯体 / 円偏光蛍光 / エレクトロクロミズム / エレクトロフルオロクロミズム |
研究実績の概要 |
外部刺激によって円偏光発光をスイッチングする光機能性材料は、種々のキロプティカル技術への応用が期待されている。その中でも、外部刺激によりCPLをスイッチングできる新奇光機能性材料は重要な研究ターゲットとされているが、これまでに素子化に有利である電気化学反応によるCPL反転の報告はなされていない。そこで本研究では、CPLのヘリシティー(CPLキラリティー)を電気化学反応によってスイッチングできる新奇機能性ポリマー複合体の創製を目的としている。 前年度までに、キラルなEu(III)錯体と電気化学的な着消色(エレクトロクロミズム)を示すビオロゲン誘導体の混合溶液中において、ビオロゲンのエレクトロクロミック反応に誘起されてEu(III)錯体からのCPLを含む赤色発光が制御できることを明らかとした。 本年度は、キラルなEu(III)錯体への配位部位を有する新規ビオロゲン誘導体を導入することで、電気化学反応によるCPL制御の効率化を目指した。また、ビオロゲン含有配位子の着色状態での光学キラリティー(吸収円二色性)の発現についても検討を行った。その結果、ビオロゲン配位子を1電子および2電子還元することで、波長600 nm付近に新たな吸収帯を示し、Eu(III)錯体からの赤色CPLほとんど消光した。この際のCDスペクトル測定を行ったところ、2電子還元によってビオロゲン誘導体を電気的に中性にすると、ビオロゲン配位子の着色帯に誘起CDシグナルが見られた。Eu(III)イオンとの静電的な反発が弱まり、2電子還元状態ではEu(III)イオンへの配位が可能となりCDシグナルが発現したものと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電気化学的な着消色すなわちエレクトロクロミズムによって、CPLを含む赤色発光強度のON-OFFの制御が可能なことを明らかとし、エレクトロクロミック分子を配位子として有するEu(III)錯体に関して検討を行い、基本的な概念実証は行えたと考える。同時に、電極固定化のためのポリマー合成に関する検討も進めており、当初目標であるポリマー複合体でのCPL制御へ向けて大きな計画の変更は必要ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で、電気化学的な着消色すなわちエレクトロクロミズムによって、CPLを含む赤色発光強度のON-OFFの制御が可能なことを明らかとし、Eu(III)錯体の配位子として働くエレクトロクロミック分子を見出した。本課題の最終的な目的である左右CPLの制御へ向けては、左円偏光発光体と右円偏光発光体をそれぞれ固定することが必要である。現在、計画書記載の通り、ポリマー中にエレクトロクロミック部位とCPL発光部位を固定化した複合膜を作製中であり、2017年度は引き続き光電気機能性ポリマー複合体の作製に取り組む。8月を目処にポリマー膜中での発光制御を可能とし、下半期にはCPLのポリマー膜中での電気化学的制御を行い、左右CPL制御膜を同一の電気化学素子中で組合せることでCPLのキラリティー制御を可能とする電気化学素子の構築を目指す。
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