モノアルキル鎖を有する棒状液晶材料のバイレイヤー結晶構造化における高移動度の一般性を調べるために、コア構造の異なるモノアルキル鎖を有する棒状液晶材料の検討や溶媒蒸気アニールによるバイレイヤー結晶化について検討した。 モノアルキル鎖のフェニル‐ベンゾジチオフェン誘導体においても、高次の液晶相を発現し、その液晶相を用いた溶液プロセスによる製膜により、平坦性の高い結晶薄膜が容易に作製できることを明らかにした。さらに、この液晶薄膜を経由して作製した結晶薄膜のXRD評価より、液晶相構造由来の1分子を1ユニットとした結晶構造であるモノレイヤー結晶構造から、130℃の熱処理を15分間行うことで、2分子を1ユニットとした結晶構造であるバイレイヤー結晶構造に変化することを明らかにした。ボトムゲートトップコンタクト構造の電界効果トランジスタを作製し評価したところ、モノレイヤーからバイレイヤーへの結晶構造変化に伴い、移動度が0.05cm2/Vsから0.6cm2/Vsと1桁以上増加することを明らかにした。 さらに、モノアルキル鎖のチオフェン‐ベンゾチエノベンゾチオフェン(Tp-BTBT)誘導体においても、単結晶の構造解析評価より、最安定な結晶状態ではTp-BTBT環が向かい合ったバイレイヤー結晶構造を形成することを確認した。液晶相経由で作製したモノレイヤー結晶構造をとる結晶薄膜を熱や溶媒蒸気によるアニールでバイレイヤー結晶構造に変化するが、溶媒蒸気アニールの方がバイレイヤー結晶構造を形成する割合が大きく、誘導体によって結晶化する条件が異なることが考えられる。 このように、モノアルキル鎖を有する棒状液晶材料を用いることで、コア部が向かい合ったバイレイヤー結晶構造を形成し、本材料系は溶液プロセス性を有しながら高移動度化を実現する材料設計の指針になるものと結論づけられる。
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