研究実績の概要 |
圧電セラミックスは様々な電子機器に幅広く使用されていが、このほとんどが地球環境に有害な鉛を含んだPb(Zr,Ti)O3 (PZT)を主成分としている。近年、環境負荷低減の観点から非鉛圧電材料の開発が強く要求されている。非鉛圧電材料の中で比較的圧電性の大きいものは、ペロブスカイト構造で、(Bi1/2K1/2)TiO3 (BKT)、(Bi1/2Na1/2)TiO3 (BNT)などが注目されている。一方、これらの圧電材料を電子デバイスに用いる場合、銀(Ag)などの電極を用い、セラミックスとの共焼成が必要な場合もある。その際、電極剤と圧電材料との反応や拡散といった問題は、素子の性能や信頼性に強く影響を及ぼすため、たいへん重要である。そこで、本課題研究ではBi系ペロブスカイト構造強誘電体セラミックス中へのAg電極の拡散挙動の評価や、低温焼結手法について検討した。 これまでに、BKTおよびBNTセラミックスに対してAgの熱拡散処理を行った後、その拡散プロファイルやイオン像を2次イオン質量分析計(SIMS)を用いて測定した。その結果、Bi系ペロブスカイト中へのAgの拡散は、PZT系と近い挙動を示すことを明らかになってきた。この結果は、Bi系セラミックス中へのAgの拡散や反応を抑制する必要があることを示しており、これらのセラミックスの低温焼結化が求められることがわかった。そこで、焼結助剤の添加により、BKTやBNTセラミックスへの低温焼結化とその時の電気的諸特性評価を行なった。その結果、BKTセラミックスではLiイオンが、BNTセラミックスではCuやBイオンを添加することにより950℃程度で高密度セラミックスが作製できると共に良好な電気的・機械的特性を有することがわかった。従来の焼成温度に比べて200℃程度の低温焼結化が実現されたことから、これらのイオン添加が有効であることがわかった。
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