太陽電池は近年の地球環境問題や石油資源問題を解決する再生可能エネルギーを利用したデバイスであり、その広範な普及拡大のために更なる低コスト化と高性能化が求められている。n型半導体酸化亜鉛(ZnO)とp型半導体亜酸化銅(Cu2O)から構成されたZnO/Cu2Oヘテロ接合型太陽電池に代表される酸化物系の無機薄膜太陽電池は、亜鉛や銅など、安価で大量に入手可能な汎用金属を原料とし、低コストかつ環境フレンドリーな湿式プロセスで作製できる「環境型太陽電池」として期待されている。 本研究は、真空および高温加熱プロセスを用いない湿式プロセス(主に水溶液電気化学析出)を駆使して、ZnO/Cu2O接合界面の制御や酸化物半導体の電気的特性の向上を図り、酸化物系太陽電池の高効率化を目指すと同時に、低温湿式プロセスを活かして、PET基板などフレキシブルな基板上に酸化物系薄膜太陽電池を構築することを目標としている。 平成29年度は市販のフレキシブルITO/PEN基板を用いて検討を実施したが、ZnOの析出形態が従来のFTO/ガラス基板とは大きく異なり、光電変換効率が低下することがわかった。そこで平成30年は透明導電膜としてZnOと同じ結晶系のAZOを採用したフレキシブルAZO/PEN基板を作製し、析出条件等種々検討を行ったところ、FTO/ガラス基板と同等の光電変換効率を示す太陽電池を構築することに成功した。これはZnOがAZO上にエピタキシャル成長し良好な結晶形態が得られたためと考えられる。
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