研究課題/領域番号 |
15K05671
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
松田 昭博 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20371437)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 均質化 / 有限要素解析 / 力学試験 / 発泡材料 / マイクロセルラー発泡 |
研究実績の概要 |
不活性ガスを高圧・高温の状態で原料ポリマーに溶解し、内部気泡(セル)の直径を1~10μmまで微細化する発泡プロセス(MCFプロセス)によって、通常の発泡材料よりも軽量でかつ高い破壊エネルギーを有する発泡材料の力学特性を設計するための数値解析手法を構築することを目的として以下の研究を実施した。 1)非線形の粘弾性体を用いた均質化解析コードの開発 非線形の粘弾性体を材料モデルとして、均質化法を採用した有限要素法の数値解析コードを新規に開発した。解析コードは、ポリウレタンおよびポリエチレン熱可塑性ポリマーを対象として、材料の力学特性に対して非線形の粘弾性体を適用した。粘弾性体はダッシュポットと弾性バネが並列に並ぶモデルとして、時間に依存する剛性と粘性を導入した。解析する領域として、立体の微細構造数個分のユニットセルを設けて、周期的な境界条件を付加することによって、ユニットセル周辺に同じユニットセルが並ぶミクロ構造を再現した。開発した解析コードによって内部気泡の直径が微細なポリウレタン発泡材料の力学特性のシミュレーションを実施したところ、引張特性・圧縮特性ともに良好な予測精度があることを確認した。 2)微細な発泡構造を有するポリウレタン系発泡材料の力学試験の実施 ポリウレタン樹脂を用いた発泡材料(イノアックコーポレーション製)を対象として一軸引張試験と一軸圧縮試験を実施し、開発した数値シミュレーションによって得られる解析結果と比較可能な材料データを取得した。試験にはスクリュー式静的荷重試験機であるオートグラフ(島津製作所製)を用いた。変形のビデオ映像からは、3次元の画像解析ソフトウェアを用いて精度の高い試験結果を得た。また、同様の樹脂を用いてマイクロセルラー発泡(MCF)プロセスによる発泡材料の製作性について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究において開発する、均質化法を用いた有限要素解析コードについては、粘性を含む非線形弾性体のモデル化に有効な非線形の粘弾性体を取り扱えるところまで開発を進めることができた。また、平成28年度に実施する予定であった解析コードの3次元化についても平成27年度内に終了している。発泡材料の材料試験については、ポリウレタン発泡材料の試験を終了し、MCF材料の試験片については製作方法や試験片の条件について検討していることから、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ポリウレタン系樹脂を用いたMCF材料試験片の製作を進め、発泡材料の力学特性に関する試験データの蓄積を推進する。そのために、イノアックコーポレーションを含めた複数の素材メーカーとポリウレタンMCF材料の製作について検討をすすめる。MCFプロセスおよび従来の発泡剤を用いた発泡プロセスの両方を用いて、異なる発泡率のポリウレタン発泡材料を作成し、力学試験および微視構造観察の結果を比較することによって、MCFプロセスが生じる発泡材料の微視的なセル構造が、巨視的な力学特性に与える影響について明らかにする。数値解析においては、MCFプロセス中の不活性ガス気泡の成長とポリマー樹脂の硬化を解析的に再現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロセルラー発泡材料、および、マイクロセルラー発泡材料と同じポリマー樹脂に対して発泡剤を用いて作成した一般的な発泡材料の試験片に対して、引張変形・圧縮変形を加える力学特性試験を実施し、比較データを取得する予定であったが、MCF材料の試験片等の作成について、それらの方法や条件についてH27年度に検討し、試験片の作成はH28年度に実施することとしたため.
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次年度使用額の使用計画 |
作成した試験片に応じて、力学試験に必要なロードセル等の備品やひずみゲージ等の実験用消耗品の購入に使用する。
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