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2016 年度 実施状況報告書

ナノカーボン複合構造体の力学的・熱的特性の原子論的解明と制御

研究課題

研究課題/領域番号 15K05674
研究機関電気通信大学

研究代表者

新谷 一人  電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (00162793)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワードナノカーボン複合構造体 / グラフェンナノリボン / 熱整流 / ピラードグラフェン / インデンテーション / コロネン内包CNT / スマネン内包CNT
研究実績の概要

●2枚の平行な正方形グラフェンの間を4本のカーボンナノチューブ(CNT)によって結合したピラードグラフェン(PG)モデルを作成し、インデンテーションを行った。CNTとしてアームチェア型、ジグザグ型それぞれ14、13種類を用意し、CNT間距離を8~16nmに変化させた。圧子をグラフェン面に垂直に押し込んで荷重‐押込深さ曲線を得、Oliverの式から硬さを求めた。その結果、PGの硬さはCNT直径の増加とともに増加し、CNT間距離、温度の増加とともに減少すること、この特性はCNTの曲げとグラフェンの伸長それぞれの押込深さに対する寄与から理解できることが分かった。

●中央部が台形あるいはT字形で左右の幅が異なるグラフェンナノリボン(GNR)の熱整流特性を調べた。小幅側のGNR幅は1nmとし、大幅側のGNR幅は3~7nmに変化させた。GNRの一端から熱を加え他端から同量の熱を引く操作を繰り返して定常な温度勾配を構築し熱伝導度を計算した。熱流方向を逆転させて熱伝導度を計算し、順方向と逆方向の熱伝導度の差の比率を表す熱整流比を求めた。その結果、T字型GNRの熱整流比のほうが大きいこと、大幅側のGNR幅を増加させるといずれのGNRの熱整流比も増加すること、この結果はGNR側端のフォノン局所状態密度から理解できることが分かった。

●コロネン内包CNTの安定構造の計算とコロネン/スマネンのCNTへの内包過程の追跡を行った。データ分散を小さくするため、昨年度使用した14種類のCNTにさらに6種類のCNTを加え、CNTの長さも10nmから15nmに増加させた。その結果、CNT内のコロネン/スマネン積層の傾斜角はCNT直径の増加とともに減少しCNT直径の臨界値を超えると一定となること、CNT断面の変形ならびにコロネン/スマネン分子とCNT内壁との距離の変化を考慮して積層の幾何学的拘束条件から傾斜角とCNT直径との関係を表す近似式が得られることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度の研究実施状況報告書の今後の推進方策に記したように、平成28、29年度に実施する項目を当初の研究実施計画から下記の3つの項目に変更した。各項目の進捗状況を記す。
●非対称グラフェンナノリボン(GNR)の熱整流特性解析:予定どおり解析を行い、論文を発表した(研究発表(平成28年度の研究成果)〔雑誌論文〕の2件目)。
●ピラードグラフェン(PG)の硬さ解析:最小限の大きさのモデルに対して解析を行い、論文を発表した(研究発表(平成28年度の研究成果)〔雑誌論文〕の1件目)。
●カーボンナノチューブ(CNT)内多環芳香族炭化水素分子積層の構造解析:コロネンとスマネンに対して解析を行い、論文を発表した(研究発表(平成28年度の研究成果)〔雑誌論文〕の3件目)。また、コラヌレンに対する解析も部分的に行った。

今後の研究の推進方策

平成27年度の研究実施状況報告書の今後の推進方策において変更した3項目に対して、今後の推進方策は下記のとおりである。
●GNRの熱整流特性解析:平成28年度に終了した。
●PGの硬さ解析:平成28年度の解析で用いたモデルにおいては、原子数をできるだけ少なくするためグラフェンの形状を正方形とした。平成29年度は、力学的対称性を考慮し、グラフェンの形状を円形にしてシミュレーションを行う。モデルに含まれるCNTの本数も十分多くなるようにモデルの大きさも大きくしなければならない。このため、計算対象の原子数が多くなり長時間計算となる。したがって、シミュレーション開始前に周到な準備が必要である。
●CNT内多環芳香族炭化水素分子積層の構造解析:平成28年度に部分的に行ったコラヌレンに対する構造解析については、不足しているデータを補充した上で論文としてまとめる。多環芳香族炭化水素分子としてさらにピレン、トリフェニレンを対象として構造解析を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では、シミュレーションデータ処理に人件費・謝金を使用する予定であった。しかし、データ処理が比較的容易であり人的支援を必要としなかったため、結果的に人件費・謝金を使用しなかった。

次年度使用額の使用計画

当初の予定よりも多くの研究成果が見込まれるため、成果発表旅費に充当する。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Hardness of Pillared-Graphene Nanostructures via Indentation Simulation2016

    • 著者名/発表者名
      R. Sasaki and K. Shintani
    • 雑誌名

      MRS Advances

      巻: 2 ページ: 45~50

    • DOI

      10.1557/adv.2016.634

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Thermal Rectification Characteristics of Graphene Nanoribbons of Asymmetric Geometries2016

    • 著者名/発表者名
      T. Iwata and K. Shintani
    • 雑誌名

      MRS Advances

      巻: 2 ページ: 15~20

    • DOI

      10.1557/adv.2016.623

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Geometrical constraint on stacking of polycyclic aromatic hydrocarbon molecules encapsulated in a single-walled carbon nanotube2016

    • 著者名/発表者名
      K. Mouri and K. Shintani
    • 雑誌名

      Phys. Chem. Chem. Phys.

      巻: 16 ページ: 31043~31053

    • DOI

      10.1039/c6cp05841h

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 粒界を有するグラフェンの力学的 ・熱的特性解析2017

    • 著者名/発表者名
      山崎 彰太、岩田 拓也、新谷 一人
    • 学会等名
      日本機械学会関東支部第23期総会講演会
    • 発表場所
      東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)
    • 年月日
      2017-03-17
  • [学会発表] カーボンナノチューブによるPAH分子内包過程と内部積層構造2017

    • 著者名/発表者名
      上甲 優介、佐々木 遼、新谷 一人
    • 学会等名
      日本機械学会関東支部第23期総会講演会
    • 発表場所
      東京理科大学葛飾キャンパス(東京都葛飾区)
    • 年月日
      2017-03-17
  • [学会発表] Stacking of Polycyclic Aromatic Hydrocarbon Molecules Encapsulated in a Single-Walled Carbon Nanotube2016

    • 著者名/発表者名
      K. Mouri and K. Shintani
    • 学会等名
      2016 Materials Research Society Fall Meeting
    • 発表場所
      Boston (United States of America)
    • 年月日
      2016-11-28
    • 国際学会
  • [学会発表] カーボンナノチューブ内スマネン分子積層の構造解析2016

    • 著者名/発表者名
      毛利 慧一郎,新谷 一人
    • 学会等名
      日本機械学会2016年度年次大会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパス(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-09-13
  • [学会発表] 支柱型グラフェンナノ構造のインデンテーションシミュレーション2016

    • 著者名/発表者名
      佐々木 遼,新谷 一人
    • 学会等名
      日本機械学会2016年度年次大会
    • 発表場所
      九州大学伊都キャンパス(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2016-09-13
  • [学会発表] 非対称グラフェンナノリボンの熱整流特性解析2016

    • 著者名/発表者名
      岩田 拓也、新谷 一人
    • 学会等名
      日本材料科学会主催平成28年度学術講演大会
    • 発表場所
      産業技術総合研究所臨海副都心センター別館(東京都江東区)
    • 年月日
      2016-06-29
  • [学会発表] ナノインデンテーションによるリーバーグラフェンの力学的特性解析2016

    • 著者名/発表者名
      葛 博陽、新谷 一人
    • 学会等名
      日本材料科学会主催平成28年度学術講演大会
    • 発表場所
      産業技術総合研究所臨海副都心センター別館(東京都江東区)
    • 年月日
      2016-06-29

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公開日: 2018-01-16  

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