研究実績の概要 |
1.研究目的 固体材料が衝撃力によって破砕されるとき、その破片の質量分布にはべき乗則が現れることがある。この法則は、衝撃破壊の結果を予測するうえで重要であるが、その特性と力学的機構は不明のままである。他方、脆性材料が破壊する際には高速で進展するき裂が発生し、き裂が突然2つに分岐することが知られている。本研究は、分岐を繰りかえす高速多重分岐き裂が、衝撃破壊で発生する破片の質量分布に果たす役割を実験的に明らかにするものである。 2.平成27年度実施計画 無限に長い帯板と同等の条件でき裂多重分岐を発生させ、理論解析の基礎となるデータを取得する。 3.研究成果 (1)大型の試験片を用い、長さ100mm以上の領域で高速多重分岐き裂を発生させた。これにより発生した破砕片の累積質量分布を測定した。(2)高速多重分岐き裂のエネルギー解放率測定に適したコースティック法を確立した。(3)破砕片質量分布に大きな影響を与えるき裂分岐角に関する静的実験を実施した。 (4)これらの成果は、以下の会議において報告された。(i) Suzuki, S., et al., International Conference on Advanced Technology in Experimental Mechanics 2015, Abstract Book of ATEM`15, (2015), 106. (ii) Suzuki, S., et al., International Conference on Advanced Technology in Experimental Mechanics 2015, Abstract Book of ATEM`15, (2015), 107. (iii)鈴木新一,他3名,日本実験力学会2015年度年次講演会講演論文集,(2015), 145.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に示すように、平成27年度の計画を順調に実施している。 1.大型試験片と多重分岐き裂の発生 横幅600mm以上の大型PMMA試験片を用い、長さ100mm以上の領域で高速進展き裂の多重分岐を発生させた。これは、無限に長い帯板中でのき裂進展と同等の実験であり、理論解析の基礎となる。計画通り実行されている。 2.大型試験片に対応した測定用光学系の構築 高速多重分岐亀裂のエネルギー解放率測定のために、直径150mmの観測領域を持つコースティック法の光学系を構築した。また、高速多重分岐き裂の測定を可能にするために、従来ほとんど用いられることのなかった測定法を導入し、測定精度の向上に成功した。最初の計画ではエネルギー解放率の測定に高速度ホログラフィ顕微鏡法や干渉法を用いることを予定していたが、観測領域の拡大に困難が伴うことと、測定に多大な労力を要することから、コースティック法を用いることとした。これも当初の計画の範囲内である。 3.研究成果の公表 得られた研究成果を以下の学会で公表した。(i) International Conference on Advanced Technology in Experimental Mechanics, Toyohashi, Japan, Oct. 2015. (ii)日本実験力学会2015年度年次講演会.これは計画調書の中で記載されていた会議であり、計画通りに実施している。
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