研究課題/領域番号 |
15K05684
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
福岡 克弘 滋賀県立大学, 工学部, 准教授 (40512778)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 非破壊検査 / 磁粉探傷試験 / 渦電流探傷試験 / 磁化 / 定量的j評価 / 微小傷 / 立体形状試験体 / 強磁性体 |
研究実績の概要 |
機械部品や各種構造物は、立体的で複雑な形状をしていることが一般的であり、その非破壊検査は難しい。一方、複雑形状部では応力集中により傷の発生率が高く、危険な因子を抱えた箇所を十分な精度で探傷できない可能性があり、現状の非破壊検査において早急に解決すべき課題である。また、高感度に傷を検出できることに加えて、その傷が破壊に与える影響の程度を判定するため、傷形状を正確にサイジングする技術の確立も、重要な課題の一つになっている。そこで本研究では、運輸機械などで使用される複雑で立体的な形状をした機械部品(強磁性体)を具体的な検査対象材とし、立体形状部に存在する全方向傷の高感度探傷システムの開発を検討した。さらに、探傷結果から傷の形状を正確に定量的評価する手法の確立も検討した。以下の3項目の研究内容に取り組んだ。 1. 広範囲に3次元回転磁界を発生する磁化システムの開発・・・立体形状の被検査体全面且つ全方向に均一な回転磁界を発生する磁化システムの開発に取り組んだ。有限要素法による数値解析を実施し、試験体の全面で且つ全方向に磁化が可能な条件を評価した。立体形状試験体を作製し、磁粉探傷試験の実証試験を実施した。 2. 磁粉探傷試験による極微小傷の定量的評価手法の開発・・・高速度カメラを用いて傷に付着する磁粉模様を観測し、その試験結果を基に傷形状を定量的に評価する手法の確立を検討した。 3. 渦電流探傷試験による複雑傷の定量的評価手法の開発・・・傷を正確に定量的評価するため、探傷結果より傷形状の推定に有利な特徴を持つプローブの開発を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 広範囲に3次元回転磁界を発生する磁化システムの開発・・・立方体形状の試験体の磁粉探傷試験を想定し、試験体の全面で且つ全方向に磁化が可能な条件を、有限要素法を用いた数値解析により評価した。磁化器と試験体の相対サイズに最適値があることが確認された。さらに、磁粉探傷試験の実証試験を実施するため、立体形状試験体を作製し、試験体に深さの異なる傷を放電加工した。磁粉探傷試験結果の付着磁粉模様と数値解析で得られた試験体内の磁束密度分布に相関関係があることが確認された。 2. 磁粉探傷試験による極微小傷の定量的評価手法の開発・・・高速度カメラを用いて傷に付着する磁粉模様の幅と高さをそれぞれ評価した。付着磁粉の幅と高さの測定結果および磁粉幅と高さのアスペクト比を用いることにより、傷の形状を定量的評価する手法を確立できた。 3. 渦電流探傷試験による複雑傷の定量的評価手法の開発・・・強磁性体における極微小傷を高感度に探傷するため、試験体の直流および交流磁界による磁化の違いを評価した。直流と交流では傷周りの磁化分布(磁束密度分布)が異なり、これにより同じ傷であっても探傷結果が異なることを確認した。探傷結果より傷形状の推定に有利な特徴を持つプローブについても開発できた。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書に記載した「研究の目的」、「研究実施計画」に即して、次年度以降の研究を推進する。具体的な推進方策を以下に示す。 1. 広範囲に3次元回転磁界を発生する磁化システムの開発・・・実際の機械部品を模擬した複雑形状試験体(十字形状およびH形状試験体)を作製する。数値解析による試験体各面の磁束密度の強度および方向を詳細に評価する。また、複雑形状試験体の磁粉探傷試験を実施し、実機磁化システムの性能について実証評価を行う。 2. 磁粉探傷試験による極微小傷の定量的評価手法の開発・・・磁粉探傷結果である磁粉模様を用いた傷形状の定量的評価手法の高精度化を検討する。傷からの漏洩磁束密度と傷形状の関係を、MIセンサを用いた計測および有限要素法解析の両面から評価する。 3. 渦電流探傷試験による複雑傷の定量的評価手法の開発・・・渦電流探傷試験の結果から傷の形状を推定する手法を確立させる。強磁性体を比検査対象とした渦電流探傷試験の高感度化も引き続き検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
汎用電磁界解析ソフトJMAGの最新バージョンを使用するためワークステーション(計算機サーバ)の更新を計画していたが、次年度の並列計算システムの構築と合わせた更新に変更したため。 海外での研究発表を予定していたが、国内での研究発表に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
複数ライセンスを用いた並列計算を行うこりにより、計算精度と計算速度の向上を予定している。ライセンスおよび計算機サーバの増設の予算として使用予定。 電流測定のための、カレントプローブの購入に使用予定。
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