機械部品や各種構造物は、立体的で複雑な形状をしていることが一般的であり、その非破壊検査は難しい。一方、複雑形状部では応力集中により傷の発生率が高く、危険な因子を抱えた箇所を十分な精度で探傷できない可能性があり、現状の非破壊検査において早急に解決すべき課題である。また、高感度に傷を検出できることに加えて、その傷が破壊に与える影響の程度を判定するため、傷形状を正確にサイジングする技術の確立も、重要な課題の一つになっている。そこで本研究では、運輸機械などで使用される複雑で立体的な形状をした機械部品(強磁性体)を具体的な検査対象材とし、立体形状部に存在する全方向傷の高感度探傷システムの開発を検討した。さらに、探傷結果から傷の形状を正確に定量的評価する手法の確立も検討した。以下の3項目の研究内容に取り組んだ。 1. 広範囲に3次元回転磁界を発生する磁化システムの開発・・・立体形状の被検査体全面且つ全方向に均一な回転磁界を発生する磁化システムの開発に取り組んだ。有限要素法による数値解析を実施し、試験体の全面で且つ全方向に磁化が可能な条件を評価した。立体形状試験体を作製し、磁粉探傷試験の実証試験を実施した。 2. 磁粉探傷試験による極微小傷の定量的評価手法の開発・・・高速度カメラを用いて傷に付着する磁粉模様を観測し、その試験結果を基に傷形状を定量的に評価する手法の確立を検討した。 3. 渦電流探傷試験による複雑傷の定量的評価手法の開発・・・傷を正確に定量的評価するため、探傷結果より傷形状の推定に有利な特徴を持つプローブの開発を検討した。
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